国際ジェンダー学会誌
Online ISSN : 2434-0014
Print ISSN : 1348-7337
育児期女性の夫婦間コミュニケーションと配偶者の家事育児分担との関連
江上 園子
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2023 年 21 巻 p. 82-101

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抄録
現在,未就学児を持つ父親の家事育児時間は少しずつ増加しつつあると言われているが,相変わらず,多くの家庭では妻が家事育児の大部分を担っている。このような状況下で子どもを持つ男性の家事育児の分担の高さと関連する要因を明らかにするため,家族社会学を中心とする先行研究によっていくつかの仮説が提唱されており,それらの仮説の中のそれぞれの要因が家庭責任における夫の分担を促しうることがわかっている。しかし従来の仮説に共通する問題として,妻から夫への日常的な夫婦間コミュニケーションの様態を取り上げていない点が挙げられよう。日常的な夫婦間のコミュニケーションは臨床的な意味でも夫婦にとって重要な要素であり,家事育児に関連するやりとりも日常的な夫婦間コミュニケーションに含まれる。そこで本研究では,従来から示唆されている仮説にかかわる変数を統制したうえでも,妻の日常的な夫婦間コミュニケーションのあり方が夫の家事育児分担と関連しているのか,検証した。その結果,妻の夫婦間コミュニケーションの中でも「相手の気持ちを読み取り合わせる」受動的なコミュニケーションが夫の家事育児分担の低さと関連し,「自分の意思や考えを表明する」能動的なコミュニケーションが夫の家事育児分担の高さと関連していた。よって,妻側の意思を明白に伝える積極的な姿勢が夫の家庭参画においても重要であるという示唆を得ることができた。
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© 2023 国際ジェンダー学会
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