国際ジェンダー学会誌
Online ISSN : 2434-0014
Print ISSN : 1348-7337
フェミニスト地域研究という企て
江藤 双恵
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2023 年 21 巻 p. 102-122

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抄録
日本においてフェミニスト地域研究は可能だろうか。本稿では,地域研究を「グローバル・サウス」という概念を活用して,当該地域の情勢を明らかにし,問題解決の方法を示す実践的な研究と定義し,フェミニストを,脆弱な個々人の経験をジェンダーだけでなく,階級,人種,その他要因(エスニシティ,障がいの有無,年齢層,セクシュアリティなど)の交差という観点から説明し理解する「反-抑圧アプローチ」の思想/人と定義する。したがって,フェミニスト地域研究とは,研究対象地域の脆弱性に関する実践的な研究と定義できよう。フェミニスト視点から既存の地域研究を批判すべき点もあるが,筆者は両者の親和性に加担して議論したい。なぜなら,「グローバル・サウス」の「最南」にあって,日々生起する深刻な問題に直面する人々の多くは女性と子どもであり,彼女らと連帯する可能性をフェミニスト地域研究という企ての中に求めたいからである。個別の女性の経験をグローバル,ナショナル,ローカルな権力の重層性,研究対象地域の文化や急速な社会経済変化の文脈の中に位置づける手法が,地域研究に深みと厚みをもたらすだろう。「反-抑圧」を自覚的に実践するフェミニスト地域研究には,脆弱な立場にあって困難に直面する人々の支援の方法を模索するだけでなく,ポスト・コロナ時代の多文化共生や連帯の醸成,そしてエンパワメントにつながるポジティブな力がある。
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© 2023 国際ジェンダー学会
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