抄録
高画質を特徴とする昇華型熱転写プリンタにおいても,高速化と低コスト化により熱転写特有の課題が生じてきた.特に感熱ヘッドへの電流集中に起因するゴーストと呼ばれる濃度段差と,感熱ヘッドの蓄熱に起因する濃度にじみを取り上げ,原因と対策法を検討した.ゴースト補正においては,電源部から感熱ヘッドまでの配線抵抗を測定分析し,この配線抵抗による電圧降下がゴーストの主原因であることを示す.さらにこの電圧降下によるエネルギ損失を,通電時間で補正する方式を検討した.つまり各階調のプリント時に,通電画素数に比例して通電時間を制御補正する手法である.また蓄熱補正では,各画素における蓄熱量として画素自体の蓄熱と隣接画素からの熱伝導を考慮した濃度関数である蓄熱関数を採用した.つまり蓄熱関数をプリントライン毎に逐次計算し,ラインメモリに保持する.次のラインプリント時に,この蓄熱関数に比例して対象画素の階調データを補正することにより,蓄熱による濃度尾引きを解消する方式を検討した.これらの検討結果について報告する.