日本画像学会誌
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最新号
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論文
  • 森田 愛生, 面谷 信
    2024 年 63 巻 3 号 p. 238-245
    発行日: 2024/06/10
    公開日: 2024/06/10
    ジャーナル フリー

    ポッゲンドルフ錯視 (Poggendorff illusion) とは,斜め線の中央部が障害物に隠れると線がずれて見える錯視である.本研究では,斜め線を遮蔽する障害物の幅の影響と,障害物と斜線の角度の影響を明らかにするために被験者実験を行った.その結果,障害物の幅が大きいほど錯視率が大きくなることと,障害物と斜線の角度が小さいほど錯視率が大きくなることがわかった.本錯視の原因としては,障害物に隠された斜線を3次元空間で観察した際の視覚経験の蓄積が,2次元平面上で障害物に隠された斜線を観察したときに,違和感をもたらすとの仮説を紹介し,前記実験結果が本仮説を支持することを示した.一方,ポッゲンドルフ錯視の検討の応用分野として,タイル状ディスプレイにおける目地をまたぐ斜線の配置として,ポッゲンドルフ錯視発生率の予想に基づき斜線の開始位置を意図的にずらした図形において,ずらさない直線的配置の図形よりも観察者の違和感が減少することを確認した.

Imaging Today
  • 宮本 栄一, 石田 英樹
    2024 年 63 巻 3 号 p. 247-257
    発行日: 2024/06/10
    公開日: 2024/06/10
    ジャーナル 認証あり

    電子写真技術の電子写真感光体廻りの重要プロセスにおいて,その中心に位置する感光体の表面電位を正確に計測することは,画像形成プロセス設計において非常に重要である.さらに高速化,高画質化の技術課題解決においては高応答性や微小領域における表面電位計測の性能向上が求められている.本報では,高画質化と画質安定化において重要な要素である感光体の電位変動挙動と潜像プロファイルの可視化・計測技術と,得られた測定結果をPIDC (photo-induced decay characteristic) シミュレーションにより比較・検証した結果について解説する.

  • 中根 良樹
    2024 年 63 巻 3 号 p. 258-266
    発行日: 2024/06/10
    公開日: 2024/06/10
    ジャーナル 認証あり

    クリーニングブレードは,耐久性・信頼性という品質特性の向上が求められている.これらの品質特性はクリーニングブレードに作用する内部応力と相関があり,水平成分は耐久性の向上に,垂直成分は信頼性の向上に相関を有する.このことからクリーニングブレードの内部応力を解析することは,クリーニングブレードに求められる品質特性の向上に繋がると考えられる.クリーニングブレードの内部応力を測定する手段であるが,クリーニングブレードが透明体であることから光弾性法を適用することができる.筆者らは,高速光弾性動画を取得し,クリーニングブレードのエッジの断面方向における内部応力の振動,および軸方向における内部応力の均一性を解析した.そして,それぞれの技術をクリーニングブレードの耐久性を解析する技術,および信頼性を解析する技術として構築したので,解説する.

  • 河野 将希
    2024 年 63 巻 3 号 p. 267-272
    発行日: 2024/06/10
    公開日: 2024/06/10
    ジャーナル 認証あり

    電子写真において多用される加熱・加圧の定着方式では,加熱させた定着部材にトナーを接触させ,同時に加圧することでメディアに定着させる.この方式では,メディアが定着器を通過してトナーが定着部材から離型する際に,離型性が良好な状態に設計する必要がある.我々は,定着部材からのトナーの離型性を評価する計測手法として,粘着剤の評価試験で一般的に使用されるピーリング試験の考え方を適用し,定着器の温度,圧力および剥離速度の条件下で,剥離時の仕事量 (剥離エネルギー) の計測を行うピーリング試験機を開発した.本稿では,このピーリング試験機の構成,計測方法と,各種条件におけるトナー離型性の評価事例について解説する.

  • 兒玉 学, 安部 惇哉, 佐藤 圭将
    2024 年 63 巻 3 号 p. 273-278
    発行日: 2024/06/10
    公開日: 2024/06/10
    ジャーナル 認証あり

    インクジェットプリンティングにおける液滴浸透領域はプリント品質並びにエネルギー効率に影響することから,浸透域制御はインクジェットプリントの高性能化に向けて重要である.高精度な浸透制御の実現には,インク浸透挙動 (液滴浸透挙動) の解明が必要であるが,既存研究の多くは,液滴浸透域の計測は表面もしくは断面からの2次元的な計測に限られていた.著者らの研究グループでは,X線CT (computational tomography) 撮影が可能なX線造影インクと,高解像度X線CT計測プロセスを開発し,単一微小液滴の各種メディア内部における浸透領域の計測を可能とした.本稿では,このX線CT撮影技法について述べると共に,染料ならびに顔料インクの浸透特性を解説する.

  • 増田 心一郎
    2024 年 63 巻 3 号 p. 279-285
    発行日: 2024/06/10
    公開日: 2024/06/10
    ジャーナル 認証あり

    普通紙にインクジェットで印刷すると紙の内部にインクが浸透し,インクに含まれる色材が繊維に定着する.印刷物内部の色材定着分布と表面の見え方の関係を定量的に把握することは,印刷画像の高画質化を目指すにあたり重要である.本検討では,ミクロトームを用いて印刷物を薄くスライスしインクの浸透深さごとの薄片に分解した.そして,薄片の顕微撮影画像の画素値に演算を行うことで,深さごとに色材定着量を定量的に分析する手法を考案した.本手法をいくつかの条件の印刷物に適用した結果,インクの浸透深さが深くなるにしたがい色材定着量は増加し,やがて減少に転じる様子や,二色のインクを紙に転移させる順序や転移の時間間隔によって各色の色材定着分布が変動する様子を確認した.

  • 佐藤 治道, 小木曽 久人
    2024 年 63 巻 3 号 p. 286-291
    発行日: 2024/06/10
    公開日: 2024/06/10
    ジャーナル 認証あり

    金属積層造形 (additive manufacturing, AM) は任意の形状の金属造形物を作成できるため,徐々に産業応用が始まっている.金属AMの課題は造形コストと造形物の信頼性にあると考えられ,これらが改善されればその適用範囲を広げられる.金属AMの製法の一つにPBF (powder bed fusion) がある.PBFは造形速度が遅いものの微細な造形と得意としており,従来の加工法では作れない形状を作成できたり,後加工を減らせる等の利点があるため精力的に研究開発が進められている.PBFの資源と時間を含めた省コスト化と造形物の信頼性の向上のため,インプロセス検査技術が求められている.PBFの造形環境に適応できる検査技術として,非接触に超音波の励起,検出ができるレーザー超音波 (laser ultrasonic, LU) が有力である.そこで,本解説記事では,インプロセス検査装置を組み込んだPBFの概念と,その要素技術の開発例を紹介する.LUを用いて積層造形物の表面下の (表面からは見えない) 欠陥の検出例と,鉛フリーはんだの固相と液相の相転移の音響特性を評価した例を紹介する.

  • 内野 真喜
    2024 年 63 巻 3 号 p. 292-298
    発行日: 2024/06/10
    公開日: 2024/06/10
    ジャーナル 認証あり

    ハイスピードカメラは,一般的なビデオカメラでは撮影が難しい瞬間的な挙動を克明に撮影し記録することができる.近年,カメラの撮影性能向上はもちろんのこと,本体の小型化や外部機器や画像解析ソフトとの組み合わせによって利用シーンは更なる広がりを見せている.

    そのような事例を実際に撮影した高速動画を用いて紹介する.

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