日本画像学会誌
Online ISSN : 1880-4675
Print ISSN : 1344-4425
ISSN-L : 1344-4425
最新号
選択された号の論文の15件中1~15を表示しています
論文
  • 荻原 僚介, 常田 妃登美, 滝本 和哉, 曽根 宏靖
    2025 年 64 巻 2 号 p. 102-106
    発行日: 2025/04/10
    公開日: 2025/04/10
    ジャーナル フリー

    近年,可視光を情報通信に利用する様々な研究が活発に行われている.また,QRコードなどの白黒の2次元コードに色情報を加えた「カラー・コード」と呼ばれる新たなコードが開発され利用されている.我々は,このカラー・コードに着目し,汎用的な電子端末と組み合わせた簡易的な多重化可視光通信システムの開発をおこなってきた.本研究では,さらなる大容量通信を実現するために,カラー・コードを動画像化して通信するシステムを構築した.それらのシステムの性能について調査した結果を報告する.

  • 高津 直樹, 正井 智, 宮澤 弘
    2025 年 64 巻 2 号 p. 107-115
    発行日: 2025/04/10
    公開日: 2025/04/10
    ジャーナル フリー

    我々は,布の構造モデルとしてシリンダーアレイモデルを採用し,インクジェット捺染印刷プロセスにおける布へのインク滴の浸透現象を調査した.数値流体シミュレーションと1次元数値モデリングを用いて,糸に平行(√D)および垂直(√D)の方向での浸透速度を評価した.結果として,有効細孔径ϕが減少するにつれて √D/√Dの比率が低下することが分かった.これは糸がより強く捻じれているとき,液体浸透が主に糸に平行な方向に沿って発生する傾向があることを意味する.さらに,X線CT(computed tomography)画像に基づいて得られた布の構造データを用いて,数値流体シミュレーションによる液滴滴下過程を解析したところ,シリンダーアレイモデルから得られた結果に従う傾向が見られた.

Imaging Today
  • 加藤 恭平
    2025 年 64 巻 2 号 p. 117-129
    発行日: 2025/04/10
    公開日: 2025/04/10
    ジャーナル 認証あり

    電子写真システムにおける一連のトナー画像形成工程をシミュレーションする手法として,トナーに働く電気力を高精度に考慮可能な粒子挙動と電磁界の連成計算法および大領域のトナー溶融変形計算法を開発した.粒子挙動と電磁界の連成計算おいては,トナー電荷に作用するクーロン力に加えて,トナーの誘電分極に作用するグラディエント力を考慮してトナーの運動をシミュレーションする.また,トナー溶融変形計算においては,トナーの粘弾性特性,定着プロセスの各設計因子,および紙形状を考慮しつつ大領域の三次元のトナー像構造の溶融変形をシミュレーションする.本稿ではこれらの計算手法について解説を行うと共に,本手法を用いた解析事例を説明する.

  • 赤羽 健二, 横山 優樹
    2025 年 64 巻 2 号 p. 130-140
    発行日: 2025/04/10
    公開日: 2025/04/10
    ジャーナル 認証あり

    電子写真における現像プロセスは色再現や背景部へのカブリなど様々な画像品質に大きく影響する.高速化,高画質化,カラー化適性が高く現在主流となっている2成分現像方式では,現像剤を構成する膨大な数のキャリア/トナー粒子が磁力や静電気力など複数の力を受けて複雑に運動するため,数値シミュレーションによる予測精度と計算コストの両立が難しい.本研究では現像パラメータと現像特性の間に介在するメカニズムに基づき,トナーが受ける力を要素分解することによりその運動を間接的に予測することで,予測精度とコストを両立して現像量,トナー飛散,画像中BCO(bead-carry-out)の定量予測を可能とするシミュレーションモデルを構築した.

  • 長尾 剛次, 大森 雅夫, 中山 信行
    2025 年 64 巻 2 号 p. 141-151
    発行日: 2025/04/10
    公開日: 2025/04/10
    ジャーナル 認証あり

    電子写真における帯電工程や転写工程などバイアスローラを用いたプロセスでは,火花放電が積極的に利用される.たとえば,帯電ロールは,感光体との間に電位差が付与され,ロール接触部のごく近傍で発生する放電によって感光体表面を帯電させる.しかし,電子写真における画像形成ではしばしば,放電が不均一になり画像に濃淡が現れたり,沿面放電を伴う樹状あるいは円形の放電パターンが画像に現れるなどのトラブルが発生する.そのように,放電には利用すべき形態と防ぐべき形態があると考えられるが,それらの間にどういう区別があり,それぞれの放電形態がどのような特徴を持つかを説明するのが本稿の主たる目的である.この目的のため,まず,放電に関する一般的基礎知識について解説する.そして,電子写真における放電現象の具体例について触れた後,放電形態について解説する.

  • 吉岡 広起, 中尾 修一, 安井 甲次, 依田 寧雄
    2025 年 64 巻 2 号 p. 152-156
    発行日: 2025/04/10
    公開日: 2025/04/10
    ジャーナル 認証あり

    現在,LBP(laser beam printer)の定着器設計において,上流設計から机上で素性の良い構成を求める効率的な設計手法の開発が求められている.しかしながら,性能間には多数のトレードオフ関係が存在することにより,要求性能を満足する設計を実現することは容易ではない.また,机上で定着器を設計する場合,定着器で発生する現象は非線形現象であることから数値解析による詳細な性能評価が必要となる.そのため,机上で多数の定着器の性能を評価し,最適な構成を求めることは解析時間の観点から現実的ではない.本論文では,これらの課題を解決する一手法として,数値解析をサロゲートモデルによって高速化し,多目的最適化によって最適な定着器を設計する手法について報告する.

  • 加藤 恭平, 江守 香南子, 大西 拓馬, 田中 正信, 安井 甲次
    2025 年 64 巻 2 号 p. 157-165
    発行日: 2025/04/10
    公開日: 2025/04/10
    ジャーナル 認証あり

    定着プロセスにおけるトナー像の三次元構造の変形過程をシミュレーションするトナー溶融変形計算手法を開発した.開発手法は,定着プロセスで生じている複雑な物理現象の計算を,トナー像加圧履歴,トナー像温度履歴,トナー像圧縮変形量,およびトナー像溶け広がり形状の各ステップに分割して計算することで,計算コストの観点で困難な数ミリ平方メートルオーダーの領域の三次元トナー像構造の変形過程を現実的な時間でシミュレーションする.本手法を用いて,紙上のトナー像の溶け広がり面積を計算し,実験との比較検証を行った結果,計算結果は実験結果を定量的に再現できることがわかった.さらに,紙上のいくつかの位置におけるトナー像の溶け広がり面積のばらつきを計算することで,濃度ムラが紙形状のどのような成分に起因して発生しているかを分析した.分析の結果,トナー像よりも大きいミリメートルオーダーのうねり形状とトナー像よりも小さいマイクロメートルオーダーの微細形状の二つが,濃度ムラを決定付ける因子であることがわかった.

  • 森山 裕将, 原田 祥宏, 西村 秀明, 加藤 弘一, 伏信 一慶, 門永 雅史
    2025 年 64 巻 2 号 p. 166-174
    発行日: 2025/04/10
    公開日: 2025/04/10
    ジャーナル 認証あり

    インクジェットにおけるピコリットルサイズ液滴の蒸発現象を可視化実験で計測し,既存の予測モデルとの比較とシミュレーションによる考察を行った.可視化装置はピエゾ方式のインクジェットヘッド,カメラ,LED,気圧・温湿度計からなり,PET(polyethylene terephthalate)シート上の純水液滴の接触半径と体積の時間変化を計測し,蒸発速度を算出する.孤立液滴および1列に配置した複数液滴での結果を既存の予測モデルやシミュレーションと比較した.孤立液滴では潜熱による蒸発速度低下が予想され,熱と蒸気拡散の連成シミュレーションで求めた温度低下を考慮することで,蒸発速度の予測値は実験とよい一致を示した.複数液滴では可視化実験により,液滴間距離が近くなると蒸発速度が低下する傾向が確認された.また熱と蒸気拡散の連成シミュレーションで実験の傾向を再現した.

  • 門永 雅史
    2025 年 64 巻 2 号 p. 175-182
    発行日: 2025/04/10
    公開日: 2025/04/10
    ジャーナル 認証あり

    本稿は東京科学大学(旧東京工業大,2024年10月より現在の名前)のリコー次世代デジタルプリンティング技術共同研究講座で行われている,インクジェットのシミュレーション解析についての紹介である.インクジェットの原理はシンプルであるが,メディア上に着弾した液滴が乾燥する過程は,様々な要因が関係する物質輸送現象であり非常に複雑である.実験だけでなく,理論解析やシミュレーションなしには理解を深めることはできない.我々はインクジェットの吐出,蒸発,メディアへの浸透,液滴内部の流れ,インクとメディアの濡れ広がりに関する研究を行ない,2020年から2024年にかけて日本画像学会を中心に研究成果を報告してきた.本解説では2021年以降,3年間での研究成果,特にシミュレーション解析事例の紹介を行う.具体的には2022年~2024年において日本画像学会で報告した,チキソトロピー流体の吐出,インクの2滴合一,ラインヘッドによる実画像形成過程,CFRP(carbon fiber reinforced plastics)へのインク滴着弾,ノズル増粘とメニスカス揺動の解析である.

  • 佐武 健一, 森 亮久
    2025 年 64 巻 2 号 p. 183-192
    発行日: 2025/04/10
    公開日: 2025/04/10
    ジャーナル 認証あり

    高分子を添加したインクは,静的粘度が同じでも,高分子添加量が多いほど所定吐出速度を得るための駆動電圧が高くなったり,分滴した液滴間の距離が長くなったりする.これは粘弾性の影響と考えられるが,そのメカニズムは明らかになっていない.本論文では,粘弾性の液滴形成に与える影響をOldroyd-Bモデルを用いた吐出シミュレーションで解析した.その結果,弾性率と緩和時間の積である溶質粘度が大きくなると所定吐出速度を得るための駆動電圧が高くなること,溶質粘度が大きいほど,分滴した液滴間の距離は長くなり,極大値を取った後,液滴間距離は短くなって,ある程度溶質粘度が大きいと1滴にまとまることが分かった.これらには,インク柱内伸長流れによる伸長粘度の増加によって,インク柱後端とメニスカスとの間のくびれ,インク柱先端と先頭滴との間のくびれの成長が遅くなることが起因していると考えられる.

  • 福江 高志, 寺尾 博年
    2025 年 64 巻 2 号 p. 193-199
    発行日: 2025/04/10
    公開日: 2025/04/10
    ジャーナル 認証あり

    本稿では,モデルベースデザインに基づく印刷過程の熱設計において,今後何が期待されるかについて議論する.熱回路網法に基づくプラントモデルを用いた電子機器の熱設計は,何も新しい考え方ではない.一方,多様化した消費者のものづくりへの要求に,設計要素を自在に考え,冒険的な製品設計の探索が求められる.印刷プロセスの根幹を担う伝熱プロセスに対し,熱設計はどのように向き合うべきか,熱回路網法はそのヒントを与えている.直近での熱設計一般で顕在化している課題,印刷プロセスにおける伝熱プロセスの分析事例を紹介し,設計のフレームワークの理想像を考える.

  • 丸山 泰弘
    2025 年 64 巻 2 号 p. 200-204
    発行日: 2025/04/10
    公開日: 2025/04/10
    ジャーナル 認証あり

    本研究では,1D-CAE(1 dimensional computer aided engineering)にニューラルネットワークを用いたサロゲートモデルを組み込む手法を提案し,サーマル印字プロセスの熱計算の高速化を実現した.サーマル印字は,抵抗発熱体による熱を用いて印字を行う技術であり,計算モデルの精度と効率が求められる.本研究では,Modelicaを用いてサーマル印字プロセスの計算モデルを構築し,ヘッドと媒体を個別のコンポーネントとして作成した.媒体コンポーネントにはGRU(gated recurrent unit)を用いたRNN(recurrent neural network,回帰型ニューラルネットワーク)を組み込み,ヘッド温度と媒体速度から熱流量と印字指標の複雑な因果関係を予測するモデルを構築した.FEM(finite element method,有限要素法)モデルを用いて生成した教師データを基にRNNを学習させ,1D-CAEの計算モデルを完成させた.これにより,従来のFEMに比べて大幅な計算時間の短縮が可能となり,複雑な熱履歴制御の検討に有効なツールとなることを示した.

  • 針貝 潤吾, 桑田 良隆, 佐々田 美里, 高田 勝之, 河本 匠真
    2025 年 64 巻 2 号 p. 205-214
    発行日: 2025/04/10
    公開日: 2025/04/10
    ジャーナル 認証あり

    当社では,プリンタに対するカラーマネージメントシステムに対し,従来のL*a*b*測色をベースとした色再現方法に加え,特色トナーの光沢再現性や,用紙の表面粗さなどの質感再現性を加えた色質感再現技術を獲得している.これまでに,金,銀,透明色,蛍光色などを使った特色印刷の印刷シミュレーションを行う色質感再現を実現している.しかしながら,近年,印刷に使用される特殊色材は多様化しており,その光学特性から従来法に沿った色再現技術だけでは再現が困難となってきている.この課題に対し,本研究では,多角度分光計測値を用いて照明方向および観測受光方向を色再現パラメータとした色質感再現技術を獲得した.今回は特に富士フイルム株式会社で開発された構造色インクジェット技術に対する色質感再現を一つの技術適用先として技術開発したので,その技術内容と再現性について報告する.

Imaging Highlight
  • 山﨑 弘
    2025 年 64 巻 2 号 p. 215-223
    発行日: 2025/04/10
    公開日: 2025/04/10
    ジャーナル 認証あり

    サードパーティといわれる互換カートリッジや互換トナー等の消耗材が安さを武器に世界的に広く使用されている.その市場はプリンター分野ではかなり大きなシェアを示している.互換品や中古機などに関する世界最大の展示会が毎年中国の珠海で開催されている.昨年の10月(2024年10月17-19日)に開催されたその展示会,REMAX WORLD EXPO 2024に見学にいってきた.あまり知られていない互換品の市場というものについて電子写真関連を中心に,その概要をここに報告する.

教育講座
feedback
Top