2002 年 41 巻 1 号 p. 25-33
この論文では,反射型液晶ディスプレイ(R-LCD)のカラーマネージメントシステムについて提案した.R-LCDは,環境光を光源として画像表示動作を行うから,R-LCDに表示される色彩は,光源が変化すると測色的な意味合いで変化する.このようなR-LCDのカラーマネージメントとして,この研究では,視覚系の順応効果を考慮に入れる方法を提案する.
最初に,変化した環境光下における対応色をR-LCDに表示するために必要なRGB信号値を求める主観実験を行った.実験の結果,実験によって求めた対応色は,von Kriesのモデルを用いて求めた対応色とよく一致することが分かった.
次に,人間の視覚系の順応を考慮して,3×4リニアマトリクスを用いて行うR-LCDの色補正手段について提案した.また,環境光センサを用いて環境光に応じて表示色を制御する画像システムについて試作し,評価した.
この画像システムでは,センサ出力を利用して環境光の種類を調査し,その環境光に対する色補正に必要な3×4マトリクスを自動発生する.これにより,環境光への人間の視覚系の順応を考慮した最適な色補正を行うことができる.環境光が変化する条件のもとで行った主観評価の結果,センサを用いない従来のR-LCDに比較して,提案した画像システムでは,良好な画質が得られることが分かった.