2018 年 57 巻 2 号 p. 160-175
トナーの摩擦帯電能を帯電量測定装置によらずに絶対値的に評価する方法として,共通の座標値で定義されたキャリア群の摩擦帯電列を定め,その摩擦帯電列上でトナーへの摩擦帯電量がゼロとなるキャリアの位置を求め,その座標値 (ゼロ·ポイント·チャージ) をトナーの摩擦帯電能値として定める方法がある.今回,日本画像学会の標準キャリアを用い,全ての測定装置で摩擦帯電列の原点となる基準トナーを設定し,標準キャリアの基準座標値と基準座標系,及び基準トナーの基準帯電特性直線を定めて,ゼロ·ポイント·チャージ法を適用するための条件について検討を行った.
その結果,各測定装置において測定された基準トナーの摩擦帯電特性を線形近似直線で表し,その近似直線を基準帯電特性直線と一致させるように各測定装置の値を線形変換すると,どの測定装置においても基準トナーのゼロ·ポイント·チャージ位置が原点となり,また,ほぼ全ての測定装置において各トナーのゼロ·ポイント·チャージ位置も共通値に近づくことが確認できた.したがって,各測定装置に共通に定められた標準キャリア群の共通座標系が定められ,その座標系でトナーの摩擦帯電特性が線形もしくは線形近似で表せる場合には,線形変換で各帯電量測定装置の値を規格化することで,種々のトナーの摩擦帯電能をゼロ·ポイント·チャージ法により絶対値的に定められることがわかった.