肌の物理特性に基づき見えを可視化し,肌質感を解析することは,化粧品や皮膚科学の分野で重要な技術の一つである.しかし,肌の物理特性を精緻に再現したモデルで見えを可視化するには,主に二つの課題がある.一つ目の課題は,角層細胞のようなnmオーダーの表面凹凸形状から,キメ,毛穴,顔輪郭などのμcm~cmオーダーの表面凹凸形状までの変化を考慮すると,異なる光学モデルを組み合わせなければならないという点である.二つ目の課題は,肌の可視化のために表面下散乱を扱うと計算コストが膨大になる点である.本稿では上記課題を解決するために構築したマルチスケール光学シミュレーション技術と,本シミュレーションを肌の光沢感の見えの可視化へ適用した例を紹介する.