抄録
本論文は磁気潜像から磁性トナーに働く磁気力について理論的に検討したものである.筆者らが開発した磁気プリンタで採用している記録媒体と磁性トナーの特性値を用いて磁気力を具体的に求め,その物理的意味を考案すると共に,計算値の妥当性を実験的事実と比較検討した.転移領域を逆正接関数近似したときの磁界の式を利用し,コンピュータによる数値計算と近似式による計算とを行なった.計算値は実験的事実とよい一致を示した.その結果,トナーに働く磁気力は仮想磁荷中心(0,-a)(a: 磁化反転定数)に向かう吸引力であり,磁荷中心からの距離の3乗に逆比例する.こと,磁気力の大きさは1039重/cm3のオーダーであり,これは磁性トナーの重さよ1りおよそ3桁大きく,電子写真においてトナーに作用する静電気力と同程度であることが明らかになった.