抄録
高ドリフト移動度の有機感光体用正孔輸送材料を開発するためのより具体的な分子設計指針を得る目的で,N, N, N', N'-テトラアリールベンジジン化合物において,ドリフト移動度に及ぼす置換基効果について検討した.N-置換フェニル基ヘアルキル基を導入した場合,オルト-,メタ-位ではドリフト移動度の向上には,大きな効果は認められないが,パラ-位では約2倍向上する.これはσ-π共役による電子密度の非局在化および立体障害による非局在化の阻害として解釈できる.一方,中心ビフェニル骨格(3-位)ヘアルキル基を導入した場合,N-置換フェニル基のオルト-位への置換から予測される結果と異なり,ドリフト移動度に約2倍の向上が見られた.この点に関し考察を行った.また,これらアルキル置換基の効果は,アルキル置換基のそれぞれの位置に対して求めたドリフト移動度の向上率(置換基定数)の積と直線的な関係にあり,定量化できることを見いだした.