抄録
キャリア発生層(CGL)とキャリア輪送層(CTL)からなる積層有機光伝導体における光励起キャリアの挙動を光音響分光法,過渡光電法(TOF法),ゼログラフィック放電法,熱刺激電流法(TSC法)を用いて研究した.CGL内でのキャリア発生の量子効率は光音響分光法で求めた.CGL/CTL界面における正孔の注入効率を光音響分光法とゼログラフィック放電法より評価した.CTL内の正孔のドリフト移動度や輪送特性はTOF法とTSC法で研究した.さらに,CGL/CTL界面とCTL内での正孔の寿命をDelayed-Field TOF法とInterrupted-Field TOF法でそれぞれ求めた.これらの実験結果から,CGL内でのキャリア生成過程とCGL/CTL界面での正孔トラッピングについて議論する.さらに,残留電位の形成と解放過程をキャリアトラッピングと関連づけて議論し,積層感光体の光疲労のメカニズムを明らかにする.