電子写真学会誌
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水性コーティング法によるε型銅フタロシアニン積層型感光体の作製とその電子写真感度の検討
李 相南星野 勝義小門 宏
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1992 年 31 巻 1 号 p. 2-10

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抄録

水性コーティング法によりε型銅フタロシアニンの薄膜を作製し,積層型感光体の電荷発生層(CGL)に応用した.電荷輸送層(CTL)としてはポリビニルカルバゾール膜を用いた.水性コーティング法は,顔料粒子を分散した界面活性剤水溶液を電解液としてアルミニウム基板上に顔料薄膜を堆積させる新規製膜法である.そこでCGLの材料であるε型銅フタロシアニン顔料の粒径に関する知見を得るために,透過型電子顕微鏡観察,遠心沈降法および走査型電子顕微鏡観察により電解液中に存在するおよびCGLを構成するε型銅フタロシアニンの粒径測定を行った.その結果,電解液中に分散されたε型銅フタロシアニンの平均粒径としては0.173 μm(重量平均径),CGLは0.4 ~ 1 μmを中心とするε型銅フタロシアニン粒子から構成されていることがわかった.また得られたCGL膜の拡散反射スペクトルおよびX線回折測定を行った結果,膜の堆積過程すなわち電解析出過程においては結晶形が転移しないものの,電解温度を上げると膜形態がより秩序立った構造になることが示唆された.次に上述のCGL層にポリビニルカルバゾール膜をスピンコートし,積層型感光体を作製した.電子写真法によって測定された感光体の感度はCGLの膜厚(すなわちCGL堆積時の通電電気量)に大きく依存し,膜厚約1000 Å で最高感度になることがわかった.これはポリマーバインダー法を用いて作製された同じ構成の積層型感光体の挙動(感度はCGL膜厚とともに増大)とは大きく異なることがわかった.

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© 1992 一般社団法人 日本画像学会
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