電子写真学会誌
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水性コート法による改良型電子写真感光体
&mdash ;暗減衰の抑制 —
星野 勝義佐藤 政文石橋 修小門 宏
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1992 年 31 巻 2 号 p. 124-133

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抄録
水性コーティング法によりアルミニウム基板上にε形銅フタロシアニン顔料(ε-CuPc)の電荷発生層(CGL)を堆積し,ヒドラゾン誘導体のホール輸送層を積層して積層型感光体を作製した.電子写真特性の測定結果から,この感光体は高い電荷受容性と光感度を示し,残留電位が小さいといった特長を有するが,暗減衰が大きく,基板から容易にホール注入が起こることが示唆された.そこで,ケルビン法によりアルミニウム基板の仕事関数の測定を行ったところ,CGL堆積のための水性コート処理により基板の仕事関数が増大し,ε-CuPcのイオン化ポテンシャル(5.16 eV)にほぼ等しい値(5.3 eV)になったために大きな暗減衰を示すことがわかった.しかしながら,基板とε-CuPc CGL間では電子注入に対する大きなエネルギー障壁が形成されるため,電子輸送層を積層化してプラス帯電型の感光体を作製すれば,暗減衰は大きく抑制されることがわかった.また,ホール輸送層を用いてマイナス帯電型の感光体を作製する場合においても,CGLとペリレン顔料誘導体のような高いイオン化ポテンシャルを有する顔料を用いれば,基板-CGL問でホール注入に対する障壁が形成されるため,暗減衰が大きく抑制できることがわかった.
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© 1992 一般社団法人 日本画像学会
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