1997 年 36 巻 1 号 p. 5-10
優れた熱安定性を有するフォトクロミック化合物であるジアリールエテンの中で,特に側鎖にビチオフェン部位をもつジアリールエテン誘導体は,光異性化により開環体と閉環体でπ電子共役長が大きく変化する.その結果として両異性体間でイオン化ポテンシャルが大きく変化することが予想される.我々は,この両異性体間でのイオン化ポテンシャルの差を利用して,金属電極から有機層への電荷注入を光制御することを試みた.その結果,ジアリールエテン誘導体薄膜を金属電極と有機電荷輸送層の問に挿入し,それを光異性化させることによって,サブmAオーダーの注入電流を制御できることを見出した.