1997 年 36 巻 2 号 p. 70-74
テトラフェニルブタジエン誘導体(1, 1-Bis (p-diethyl aminophenyl)-4, 4-diphenyl-1, 3-butadiene.)をCTM(Carrier Transport Material)として用いたOPC(Organic Photoconductor)を試作し,CTL(Carrier Transport Layer)に発生する代表的な欠陥の一つであるクラックに及ぼす,加熱乾燥・冷却条件の影響を調べた.
CTLの加熱乾燥時間やCTM濃度のクラックに及ぼす影響は比較的小さく,他の特性を維持できる範囲で欠陥をなくすることはできなかったが,冷却速度のクラックに及ぼす影響は顕著であり,加熱処理後の冷却速度を一定以上とすることで,クラックの発生率を大幅に改善できることを見出した.
この高冷却速度で作製したOPCの,機械強度および静電特性は,自然冷却で作製したOPCと差がなく,CTLはマクロ的には冷却速度が変わっても変化しないと考えられる.一方,ミクロ的には自然冷却で比較的低い冷却速度で作製したOPCは,CTL中でCTM分子が会合状態にあり,また極表面にもCTM分子が偏析し,クラックの原因になるものと予想した.