抄録
この度、国際生命情報科学会(ISLIS)の第13代の会長を拝命しました。ISLISは、1995年に、生命情報に関する科学的研究の推進、国際的交流提携を目的として設立され、意識・心・脳が関与する分野などにおける未知な現象を科学的実証に基づき解明することを目指しています。現在世界11ヶ国に情報センターを有し、15ヶ国以上に多くの会員が所属しています。
私は、1984年に日本医科大学を卒業し、同大学の精神医学教室に入局しました。恩師の故遠藤俊吉教授の指導の下、脳波グループに所属し、主に気分障害患者の脳波分析の仕事に従事しました。現在ISLISの副会長である河野貴美子先生とも脳波研究を通じて交流を深め、故遠藤教授とともにISLISに入会しました。
当時、河野先生は科学的には十分解明されていなかった気功、瞑想、アロマ、催眠などの脳波分析による生理学的な病態研究をされており、我々も医局の研究領域の一つとしてアロマや催眠に対する脳波研究を実施しました。
その後、私は1999年から1年あまりアイオワ大学精神科に留学し、Robinson教授のもとで脳卒中後の感情障害や認知障害の研究に従事しました。帰国後2003年から日本医科大学千葉北総病院・メンタルヘルス科の部長・准教授を経て2013年より現職となっています。
精神医学は人間の「こころ」を扱う領域であり、その現象を理解するためには、基盤となる「脳」機能についても理解を深めるとともに、その人の価値観や生活習慣などを含めた心理・社会的背景など全人的な対応が重視されます。
当学会の会長就任に当たって、山本幹男理事長から医療分科会を立ち上げるよう依頼されました。当学会はさまざまな分野の第一人者が多く在籍しており、さまざまな手法を用いた研究を行っています。未知の世界を解明するに当たって、医療分野とさまざまな科学分野の智恵を結集して、質の高い研究デザインの確立と、1つずつの研究成果の積み重ねにより、いままで以上にエビデンスレベルの高い実証的研究を行える環境整備にも微力を尽くしたいと考えています。
皆様のご理解とご協力を何卒よろしくお願い申し上げます。