抄録
エビデンス重視の西洋医学で、医療の中核を占めてきたのは疾病症状の除去であり、その研究対象も回復過程ではなく発病過程や症状論ばかりに目が向けられてきた。医療論文の検索をかけても疾病の回復過程を扱ったものは不思議なほど極端に少ない。
その一方、古代ギリシャの時代にヒポクラテスは疾病の回復過程を重視し、自然治癒力の存在に既に注目していたという事実もある。ヒポクラテスは疾病からの回復のメカニズムに重きを置き、医療のあるべき姿を考えた。自然治癒力、抗病力を高めることを医療の本質と捉えていたのである。このヒポクラテスの考えは、ネオヒポクラティズムとして一部の識者に再評価されてはいるが、高度先進医療を至上とする現代医療においては異端視されているのが現状である。
シンポジウム当日は、遠き時代にヒポクラテスも注目した自然治癒力をどのように疾病からの回復に活かせるのか、演者の実践しているホリスティック医療に基づくうつ病臨床の観点から自尊感情の回復論も含めて自説を展開する予定である。