国際生命情報科学会誌
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会長講演
脳卒中後のうつとアパシー
~その病態と対応について~
木村 真人
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2020 年 38 巻 1 号 p. 17-

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抄録

我が国における脳卒中の死亡率は減少傾向にあるが、後遺症を抱えた脳卒中の有病者数は380万人にも達することが推測されている。脳卒中後うつ病(post-stroke depression: PSD)は、脳卒中患者の約3割に出現するが、適切な診断と治療によって、ADLや認知機能の改善だけではなく、生命予後までも改善することが明らかにされている。また、脳卒中後には、うつと混同されやすい病態として、自発性の低下を主体としたアパシーを呈することも少なくない。うつが自己の状態に悩むのに対して、アパシーは自己の状態に無関心で悩まないことが鑑別点として重要である。PSDに対する抗うつ薬治療としてはSSRI、SNRI、NaSSAなどの忍容性に優れた薬剤が第一選択薬となる。アパシーが目立つときには、SSRIなどの抗うつ薬の効果は乏しく、ドパミン作動薬やアセチルコリン作動薬が有効の場合がある。リハビリテーションでは、うつ状態が重度の場合には休養や、軽い負荷の他動的運動療法を考慮し、軽度から中程度の場合には、ある程度の強度を持った有酸素運動が有効である。アパシーが目立つ場合には、休養よりもレクリエーションを含めたリハビリの工夫や行動療法的アプローチが必要になる。脳卒中治療においては、うつやアパシーへの対応を含めた総合的医療が必要であり、精神科を含めた各診療科との連携や多職種によるチーム介入が課題である。

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