2020 年 13 巻 p. 153-172
本稿は「昭和天皇の戦争責任」をめぐる過去の議論について整理する。昭和天皇の戦争責任については、その発言や行動、立場や役割をどのように理解するかをめぐって議論されてきた。多くの論者が、それぞれの歴史認識や、戦争や天皇に関わる体験に基づいて、意見を闘わせてきた。しかし、それらの議論によっても、「天皇の戦争責任」の問題の所在が明確になったとはいいがたい。多様な議論が重複し、錯綜することで、何が問題であるかが逆に不鮮明になったともいえる。そこで本稿は、議論を3つの問題群(天皇の法的責任・政治的責任・道義的責任)に分け、それぞれの問題ごとに、昭和天皇の戦争関に根をめぐる議論を整理する。
天皇の法的責任については、大日本帝国憲法における天皇の位置ゆえに、天皇の戦争責任を問うことは難しいとする意見が大勢を占めてきた。政治的責任については、天皇が完璧な立憲君主として発言・行動したのか、それとも、その意思に基づいて発言・行動したのではないかという論点を軸に、天皇の戦争責任の有無が争われた。道義的責任については、国民の立場からみる責任追及議論、天皇の心情に寄り添った議論、戦争責任は天皇だけではなく国民にもあるとする考えなどが出された。しかしそこでは、天皇には道義的な責任があるとする考えが、大勢を占めてきた。
本稿では、これらの議論を詳細に敷衍し、整理することにより、改めて「昭和天皇の戦争責任」を問うものである。