2023 年 16 巻 p. 86-101
本稿の目的は、福祉オリエンタリズムからの脱却を目指し、西欧と東アジアを同じ視点で比較するための新たなアプローチを模索することである。そのために東アジアの福祉国家論の研究動向を概観し、その限界点と到達点を明らかにする。その際、本稿では東アジア福祉国家論の議論動向を第1期から第4期に分けて検討する。福祉レジーム論には東アジアの例外化と北欧中心主義的な指標の利用という2つの福祉オリエンタリズム的偏向性が発見されている。これに対して「第1期」の儒教主義福祉国家論と「第2期」の機能的等価物論では、前者を問題視し、これを回復するために東アジアの福祉国家の特徴把握を目指していた。しかし、東アジアにのみフォーカスした分析では西欧を含めた議論がなされにくいという課題が残されていた。「第3期」の家族主義福祉レジーム論では脱家族化指標を用いることで東アジアと西欧の両方を説明しうる分析枠組みが提示された。しかし、脱家族化指標そのものが北欧中心主義的であると指摘されていた。「第4期」の家族主義の多様性論では、一義的な脱家族化指標を多元化することで北欧中心主義的な指標を修正する。「第4期」では福祉国家の私的領域のみの分析に限定されているが、新たな段階として、指標の多元化を公的領域にも生かすことで、2つの福祉レジーム論に内在する福祉オリエンタリズム的偏向性の克服が期待できる。