理論と動態
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戦死者追悼と集合的記憶の間
──原爆死した動員学徒を事例として──
直野 章子
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2014 年 7 巻 p. 2-20

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抄録

 本稿では、死者追悼を死者に関する記憶行為として捉えながら、集合的記憶と死者追悼とがどのように関連しているかを明らかにすることを目的とする。具体的には、多くの犠牲者を出しながら、戦後の早い時期から追悼記集を刊行し続けた広島県立広島第一中学校(一中)と広島市立第一高等女学校(市女)、そして国家による死者顕彰を要求する「広島県動員学徒犠牲者の会」(「学徒犠牲者の会」)が発行した追悼記集に収録された手記を対象として、集団の特徴と追悼における語りの内容との相関性を分析した。戦後日本の戦死者追悼において支配的となった〈平和主義の語り〉〈殉国の語り〉〈平和の礎論〉という3種の語りが、どのように表現されており、それが原爆の集合的記憶との関係で何を意味するのかを検討した結果、以下の点が明らかになった。1)集団によって死者追悼のあり方に違いがみられるが、共通性も確認できる。2)遺族であるか同窓生であるかという死者との関係性の違いが追悼の在り方に影響を与えている。3)日本社会における原爆の集合的記憶が、3つの集団の構成員の死者追悼のあり方に、より大きな文脈を与えている。4)社会の集合的記憶の枠組みでは捉えきれない死者追悼の営みが存在するが、家族や学校という〈記憶の集団〉が解体していくなかで、原爆死者に関する記憶は社会全体の集合的記憶に吸収されていく可能性が高い。

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© 2014 特定非営利活動法人 社会理論・動態研究所
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