抄録
 本特集は、国際ボランティア学会第25回大会で開催されたシンポジウムにて十分な議論ができなかった外国籍の子どもの就学義務化について扱う。
 国籍を問わず、すべての子どもにも日本の公立学校に通う道が開かれている。しかしながら、日本政府は外国籍の子どもの保護者には義務を課さない、という姿勢を崩さない。それによって、学齢の外国籍の子どもの約1割が不就学状態に置かれているという実態が、今なお続く。さらに、無国籍状態の子どもの就学については、その実態さえもわからない。
 そこで、本稿を本特集の序文として位置づけ、同シンポジウムの登壇者等の各論稿につなげたい。主にボランティアが外国籍の不就学児の学びを支えているという現状を踏まえつつ、不就学に置かれた子どもの声なき声に耳を傾けることから、外国籍の子どもの就学義務化をめぐる議論の緊急性を示すことが、本稿の目的である。最近の国が行った調査結果とも重ねながら、義務教育の対象外扱いの子どもの保護者の姿の可視化にも試みる。