抄録
本報では, 光ディスクのトラッキング制御における制御性能の改善について報告する.我々は, 現代制御理論のオブザーバを用いて, 制御システムをレギュレータの構成とすることにより安定性を確保し, 繰り返し制御を導入することにより追従精度を向上させた.ここに用いた同一次元オブザーバはアクチュエータの持つ高域機械共振を抑圧した推定速度を出力し, これにより制御帯域を拡大している.また, レギュレータシステムの持つ周期性追従目標に対する偏差の発生を抑えるため速度ループの帯域を制限し, 定常偏差を抑えるため繰り返し制御を用いた.しかし, 繰り返し制御は無限個の極を持つ中立むだ時間系であるため振動的になりやすく, 帯域制限フィルタとアッテネータにより補償を行った.以上の結果として我々は, 制御帯域8.5kHz, 位相余裕70degで, 600μmもの偏芯を有するディスクにおいてもほとんど偏差のないシステムを実現した.