映像情報メディア学会誌
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液晶ディスプレイにおける動画質の検討
CRTディスプレイとの比較
田村 徹大石 巌
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2001 年 55 巻 3 号 p. 479-487

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抄録

液晶ディスプレイは, CRTディスプレイと比較して立上り, 立下り時間が遅く, また発光が1フレーム期間持続的であるために動画像を表示した際の画質低下がいわれている.しかし, 実際の液晶ディスプレイにおいて動画質を評価しCRTディスプレイと比較検討した報告はない.そこで, 本研究ではTN, IPS, STN各液晶モードの液晶ディスプレイ上に表示された動画の画質をCRTディスプレイと主観的に比較評価した.評価パターンとして黒地に白の線がその場で回転するものと, 白黒のチェッカパターンが水平方向に移動するものを使用した.前者は視線移動が少ない場合を想定し, 後者は視線が対象を追従して動く場合を想定した.また, 液晶ディスプレイの応答速度が階調レベルに依存することを考慮し, 白と黒の階調の組合せを0を最小レベル, 100を最大レベルとして, 0-100, 0-50, 50-100, 50-75の4種類とした.主観評価結果によるとSTNモード液晶ディスプレイは他のモードの液晶ディスプレイに比べて明らかに画質低下が認められたが, TNモード, IPSモードでは, いくつかの条件を除けば画質差は見られなかった.CRTディスプレイとの画質差が検知されない限界速度は, 線パターンでは, 519~1038deg/s (TN, IPS), 130~230deg/s (STN) となった.また, チェッカパターンでは, TNモードの0-100, 0-50条件およびIPSモードの50-75条件では, 168~350dots/s, TN, IPSモードの他の条件は, 78~168dots/s, STNモードは78dots/s以下となった.
エッジぼけ幅を基にCRTディスプレイとの画質差が検知されないための立下り時間を検討したところ, 1~2msが必要であることがわかった.

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