抄録
デジタル技術の飛躍的な進展に伴い、世界的に放送のデジタル化が進んでいる。我が国においても、既に1996年にCSデジタル放送が開始され、2000年からはBSデジタル放送が開始される予定である。地上デジタル放送に関しては、地上デジタルテレビジョン放送と地上デジタル音声放送について、放送方式の策定やチャンネルプラン等の放送開始に向けた準備が進められている。今年5月に地上デジタルテレビジョン放送の放送方式が答申され、11月には地上デジタル音声放送の放送方式が答申される予定であり、放送方式策定の作業は完了しつつある。地上デジタルテレビジョン放送と地上デジタル音声放送の放送方式には、NHKが開発した地上デジタル放送方式ISDB-Tが共通に用いられている。ISDB-Tは帯域幅約430kHzのOFDM信号(OFDMセグメントと呼ぶ)を基本単位とし、1つ以上のOFDMセグメントを組み合わせることで伝送信号を構成するため、狭帯域のデジタル音声放送から広帯域のデジタルテレビジョン放送まで柔軟に設定できる。また、OFDMセグメントの伝送パラメータは幅広い伝送特性を網羅しており、固定受信から移動受信まで対応できる。さらに、OFDMセグメント単位で伝送パラメータを設定できるため、異なる伝送特性のOFDMセグメントを組み合わせることで階層伝送を実現できる。ここでは、下記の内容で地上デジタル放送方式についてチュートリアルな解説を行うとともに、地上デジタルテレビジョン放送の野外実験結果について紹介する。