抄録
ヒト視覚系では局所的に生じる順応と視野全体の平均的な輝度に対する順応が生じると考えられる.その上, Enroth-Cugellらの生理実験の結果から, 局所的及び平均的順応以外の順応の存在が示唆される.本研究では, 周囲の明るさの影響を受けて変化する順応(周辺順応と呼ぶ)が存在するのか, また, 錐体密度が不均一な網膜で, 仮定した周辺順応が一様に生じるのかについて心理物理学的な測定を試みた.その結果, 中心窩付近で周辺順応が生じることが示唆された.さらに, これらの実験で得られた結果に基づいて, 3つの円形指標の明るさ比較実験を行い, 大きさや輝度が同一でも注視している図形が最も明るく知覚されるという結果を得た.