抄録
(BEDT-TTF)(TCNQ)はドナー性分子であるbis(ethylenedithio)-tetrathiafulvalene(BEDT-TTF)とアクセプタ性分子である7,7,8,8-tetracyanoquinodimethane(TCNQ)により形成される電荷移動錯体で、330Kにおいて金属-絶縁体転移を示す。この(BEDT-TTF)(TCNQ)結晶を活性層とした両極性電界効果トランジスタの伝導特性を詳細に調べ、電界効果電子移動度、正孔移動度の急激な増加を280Kにおいて観測した。バルクの導電率の温度依存性にはそれに対応した増加は見られないことから、FETのチャネルに特有の現象と考えられる。また、250K〜280Kの温度領域では誘電特性の変化が伝達特性に現れ、それを解析したところ強誘電体的な分極の存在が明らかとなった。