抄録
知的財産は、間違いなく21世紀の産業における競争優位性の主要な要因である。その様な状況は、21世紀になって突然訪れるのではなく、過去においても知的財産(主として技術)が競争優位性に大きな役割を果たした産業が多数見られる。そのような産業の中で、DRAMやDVD産業では、知的財産権(主として特許権)で守られた極めて強固な技術優位性を保有していた日本のエレクトロニクス業界は、世界レベルでの産業のリーダーシップを維持できなかった。この事実は、知的財産権の重要性を認識しているだけでは、事業の優位性を構築するには不十分であることを示している。本論文では、知的財産権として重要性の高い特許に注目して、「知的財産権による独占」と「商品ライフ・サイクル(PLC)」の2次元フレームワークを用いて、それらの知的財産権により構築される競争優位性を視覚化する方法を議論する。