抄録
車載カメラは車両周辺の環境を入力するためのセンサとして広く用いられる.しかしながら,センサとしてのカメラは晴天時では有効に働くものの,荒天時ではレンズへの付着物により画像の有効部分が減り性能低下が懸念される.同様の状況は,ドライブレコーダのようなカメラを有する車内設置型の装置において,車両のガラスを通して車外を撮影する場合にも起こりうる.本研究では,荒天時の車載カメラ映像に対する視認性改善に向けた基礎的検討として後者の状況に着目し,フロントガラスへの付着物により前方が遮蔽された領域の修繕を試みる.手法は,付着物として雨滴を想定し,一台の一般的なカメラを用いて雨滴の検出,および,その部分の修繕を行い,雨滴が除去された映像を生成する.各時刻における画像の修繕は,直前の数フレーム分の画像を用い,それらから雨滴の存在しない部分を統合して行う.本文では一台のカメラの映像を用いて修繕を行う際の問題点について考察し,実験においていくつかの修繕例を示す.