抄録
共感覚の経験を生じさせるために必要な刺激の要素や、各刺激の処理が一般的なメカニズムと比べ、どのlevelで行われているのかについてはまだ論争が続いている。本研究では、異なる感覚様相の共感覚を比較することで、それぞれの情報処理のレベルが色に対してどの位置に値するのかを知ることができる。被験者は共通的に共感覚色を経験する2種類の共感覚の被験者2名(色字共感覚者、色聴共感覚者)に2種類ずつの刺激を提示し、計4つの実験を行った。その結果、本実験の色字共感覚者の場合、類似な形態の文字の場合には似た共感覚色を、文脈による文字認識では異なる共感覚色を経験した。両者で共感覚色を経験することはmultilevelで処理されていることを示す。色聴共感覚者は、ノイズよりも音楽に明確なイメージを経験した。また全体的まとまりのメロディーよりは物理的単音の影響を強く受けた。このように色字共感覚者も両方で共感覚を経験し、色聴共感覚者はノイズ刺激に対しての経験は弱かったが両方で共感覚を経験していて、両者の共感覚がmultilevelで処理されていることが分かった。本実験の被験者については、文字共感覚者はprojector、色聴共感覚者はassociatorと考えられ、両者の間には色知覚過程とのinteractionにレベルの差異があると考えられる。