抄録
視覚誘発電位のP-100成分の潜時は,視覚疲労によって延長されるといわれている.水平両眼視差を用いた立体ディスプレイによって呈示された奥行き空間と,実空間を観視したときの視覚疲労を評価するために,それぞれの条件での観視前後でのP-100成分の潜時の比較を行った.結果として,立体ディスプレイで呈示した奥行き空間と実空間の両者の観視後において,P-100成分の潜時は同様に延長した.このことから,P-100成分の潜時の延長の原因となっている視覚疲労は,奥行き方向の輻較眼球運動を行うことによって生じたものであり,立体映像特有のものではないと考えられる.