抄録
映像素材をテープレスで扱うファイルベース化が放送分野で進められている.現行のFPUは単方向かつ固定レートの無線伝送システムであるため,ファイルベース化された映像素材をそのままの形式で伝送することはできない.筆者らは,ファイル形式の映像素材を実時間以下の転送速度で無線伝送できる次世代FPUシステムの開発を開始した.本稿では,複信方式として最大の時間利用効率を達成できるTDD方式のハードウェア実装方法を提案し,試作した送受信制御部に実装して評価する.また,別途試作した送受信高周波部や偏波共用スプラッシュプレート型アンテナを組み合わせた双方向デジタルFPU実験装置を用いて,長距離伝送を想定した評価試験を電波無響室で実施した.その結果,提案するTDD方式,直交偏波を利用する2×2MIMoや256QAM変調方式の導入により,片方向最大180Mbpsを超える伝送レートで50kmの長距離伝送を実現できる見通しを得た.