抄録
映像酔いの主要因である映像中の視覚運動として、身体を中心とした3軸(ヨー、ロール、ピッチ)回りの回転を視覚的に与える効果が報告されている。このうちヨー軸での回転は、他の軸での回転と比べて視覚情報と前庭情報の不一致が少ないため、映像酔いへの効果が相対的に小さいと考えられる一方、ベクションへの効果が高いと考えられる。しかし2D映像では、必ずしもこれと対応しない結果が示されている。そこで本研究では、3D映像により没入性を高め、ピッチ及びヨー軸での回転をよりクリアに提示することで、ヨー軸でのこうした効果を検討する。その結果、映像酔いの主観評価及び自律神経活動(LF/HF)に2Dと3Dの映像種類の主効果がみられず、またピッチ軸とヨー軸の軸間での主効果も見られなかったが、ベクション強度については軸間の主効果が見られ、ヨー軸の値が大きかった。これは2Dと3Dとによらず、3Dメガネの利用と高解像(2K)の映像による効果であると考えられる。