ITヘルスケア誌
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調査報告
保険薬剤師業務のデジタル化・ICT化の現状および意識調査
土井 信幸小見 暁子富澤 崇
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2022 年 17 巻 2 号 p. 11-23

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抄録

保険薬局(以下,薬局)の医療ICT(薬局に特化したものをPharma Techと呼ぶ)の導入や活用は,医療アウトカムの増大,医療サービスの向上,患者の利便性を高める上で不可欠である.しかし,Pharma Techを使う側の薬剤師はICT化を歓迎しているのか,薬局のICT化は進んでいるのかは調査されていない.本研究では,薬剤師業務のデジタル化・ICT化の現状とその必要性や抵抗感などの意識に関して調査した.

薬剤師が自身の職場のデジタル化やICT化を推進することの必要性を感じている割合は86.7 %であった.薬局のICT化の現状として,電子薬歴,電子版お薬手帳,医薬品の在庫管理システム,投与後のフォローアップシステム,処方せん送信システム,調剤過誤防止システム,電子決済機能の導入については,単店舗薬局と比較して複数店舗薬局において有意に高い割合だった.また,薬局のデジタル化・ICT化の推進への意識,進捗の現状,社内でのICT研修の設置,ICTを専門とする担当者の設置も複数店舗薬局において有意に高い割合であった.

デジタル化・ICT化では,単店舗薬局,複数店舗薬局の間に差があり,組織の資金的な要因もあるが,ICT機器を提供するベンダーがコストに見合った薬剤師の業務効率化,患者満足度の向上,薬物療法のアウトカムの向上といった薬剤師側が期待する価値を現段階では創造できていないことも考えられる.また,意識に関する個人因子は年代によって違いが見られた.

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