抄録
二十一世紀,環境の世紀と云われて十数年が経過した今日,生活圏の緑地は我々国民にとってますます重要な社会的共通資産となっている.これらの緑地は,植栽した植物である樹木類,花卉花木類,芝草など被覆植物と自然に発生した非植栽植物(雑草)とが混在した植生として成立している.この植栽植物と非植栽植物から構成される多様な緑地において,この両者が複雑に影響し合う植生を,望ましいい方向に維持・持続させていくには科学的アプローチが必要となる.しかし,現状の緑地管理は,インフラとしての機能を維持・育成するためではなく,コスト・労力からいかに低管理レベルで“清掃”出来るかという視点で行われている.この結果,緑地の荒廃や利用効果の劣化,ひいては雑草の繁茂や処理費用の増大をまねいている.緑地それぞれの存在目的および利用目的にそった機能を保全または育成していくには,植栽植物と非植栽植物の生理生態に基づいた‘適切な手入れ’が必要となる.本文は,緑地の適切な管理の在り方について解説する.