草と緑
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最新号
選択された号の論文の4件中1~4を表示しています
  • 山田 晋
    2021 年 13 巻 p. 1-12
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/31
    ジャーナル オープンアクセス
    本稿では,刈取り以外に雑草植生の形成や維持に影響を及ぼす要因のうち,種間相互作用と土壌化学性という2点を紹介した.「ある場所でより早く生育を開始した個体が,それより後からきた個体よりも残存・定着に際して有利であり,長期的に残存しやすくなる」というプライオリティ効果は,雑草植生が年月をかけて徐々に「管理」に適合した姿となるまでの「途中段階」への理解を深めるのに役立つ理論である.貧栄養土壌は,一般に,植物の種多様性の高さと深く関連することが知られるが,それに加え,土壌化学性はプライオリティ効果の強さや刈取り後の植生変化速度を変えることを通し,植生の形成に無視できない影響を及ぼす点でも重要である.
  • 與語 靖洋
    2021 年 13 巻 p. 13-25
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/31
    ジャーナル オープンアクセス
    2021年に策定された「みどりの食料システム戦略」における重要業績評価指標(KPI)として,化学農薬使用量の50%低減(リスク換算)が掲げられている.一方,本稿で主に扱う除草剤を含む化学農薬(以後“農薬”とする)は,植物保護に関連する作業を省力的かつ低コストで実施するための欠かせない道具であり,緑地における植生管理も例外ではない.2020年の農薬取締法の一部改正は,農薬の安全性のより一層の向上等を目指して,農薬規制の国際的動向を踏まえたリスク分析の導入や再評価制度への移行等を柱としている.農薬取締法は,内閣府,農林水産省,厚生労働省,環境省等の複数の省庁が関与しており,改正後の今回の改正においては,旧法から増加して全体で100を超える個別試験がリストされている.農薬に関する法律は,その多様な使用場面から,食品衛生法,水道法,水質汚濁防止法,土壌汚染対策法等,同法以外の複数の法律が省庁横断的に適用されており,数多ある化学物質の中で,農薬はヒトと環境への影響について最も厳しく管理されている.食の安全については,ADI(Acceptable Daily Intake,一日摂取許容量)やARfD(Acute Reference Dose,急性参照用量)をベースに残留農薬基準や農薬登録基準が定められている.環境影響については,土壌,水,大気中の挙動を把握したうえで,作業者や生活環境動植物に対するリスク評価が行われる.さて,除草剤や抑草剤の最大の特徴は選択作用性であり,安定的に選択幅を確保すること,すなわち作物への安全性が求められる.それらには省力化や作物や作業者等への安全性向上を目指した様々な製剤や処理方法があるが,日本の使用環境への適性も厳しく求められる.農薬は,有害性と曝露からその影響を把握するリスク管理が行われている.これらのリスク管理が充分であるか一律に述べることはできない一方で,過度に安全側に管理することも決して科学的とは言えない.今後は植物保護の道具としてのベネフィットを加味したレギュラトリーサイエンスを導入することで,農薬使用者から一般市民まで幅広い利害関係者間で情報共有することが求められるであろう.
  • 中川 豪, 白﨑 健悟, 佐治 健介, 伊藤 操子
    2021 年 13 巻 p. 26-37
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/31
    ジャーナル オープンアクセス
    雑草管理の省力化や景観向上,土壌保全を図り,持続可能な植被育成を目的にカバープランツと織布シートを併用する技術が普及してきた.しかし実際は,長期の植生維持に成功している例はごく少数である.大半は数年を待たず衰退し,むしろその現場では維持管理作業を複雑に,そして困難にする場面も出てきている.根本的な原因は,施工が完成した時点でその状態が自然に(放任しても)維持されるという施主・関係者の思い込みである.本稿の目的は,これらには科学・技術に裏付けされた維持管理が必須であり,株式会社白崎コーポレーションによる施工後のモニタリング調査と京都大学雑草学研究室による雑草管理試験から得られた成果で解析し,知見と科学的知識を統合することによって,織布シートを活用した持続的植被を効果的かつ経済的に形成・維持するための指針を明確にすることである.植被衰退の最大の原因は雑草にあることは明らかなので,とくに雑草管理については詳述した.さらに,植物発生材も併用したより質の高い植被の形成・維持についても検討を加えた.なお,現場では種々のカバープランツが使われているが,同様に雑草管理で植被維持の成否が決まっていることから,ここでは最も汎用されているシバザクラに絞ってまとめた.
  • 伊藤 幹二
    2021 年 13 巻 p. 38-49
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/31
    ジャーナル オープンアクセス
    花粉によって起こるアレルギー疾患花粉症(pollinosis)は,欧州のイネ科雑草花粉症,北米のブタクサなど広葉雑草花粉症および日本のスギ花粉症が世界三大花粉症と呼ばれている.雑草花粉症は日本にもあり,とくにヒートアイランド化と地表の不透水化による都市・市街地生態系の近年の変貌は,雑草のバイオマスとそこから放出される花粉の量や動態を通じて花粉症発症に影響していることが推察される.そこで,NPO法人緑地雑草科学研究所の市民科学集団「雑草ウオッチャー」を対象に,抗原性植物として登録のある雑草の分布,ならびにスギ花粉以外の花粉症発症例に関してデータ収集を実施した.得られ結果によると,発症の原因となる抗原(アレルゲン)を産出する抗原性雑草は,生活圏に広く見られ接触する機会も多く,報告者の半数以上がアレルギー性鼻炎の経験者であった.雑草花粉によるアレルギー性疾患は,複数の重症者の存在や家族・知人への広がりからみて,スギ花粉症に劣らず深刻な状況にあることが認められた.この目に見えない雑草花粉粒汚染の実像を理解するために,さらに文献的調査を行い,国内外の経緯とデータを基に特定された雑草アレルゲン(抗原),花粉粒の標的臓器と症状,花粉粒の移動と人体への侵入,花粉粒の大気中での挙動,花粉粒が運ぶ微生物について解説した.本稿の目的は雑草花粉症を「恐怖メッセージ」として受けとられることではなく,生活圏の雑草害の本質とそれを放置するリスクの重大さに気づいていただき,そのリスクの回避に多くの管理者と生活者の目が向けられることにある.そして,私たちの健康と生活環境の改善に係わる持続可能な開発目標(SDGs)の達成に生かされることが大切である.
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