草と緑
Online ISSN : 2424-2551
Print ISSN : 2185-8977
ISSN-L : 2185-8977
最新号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
  • 冨永 達
    2025 年17 巻 p. 1-12
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/30
    ジャーナル オープンアクセス
    除草剤の使用は,農耕地,非農耕地に関わらず合理的・持続的な雑草管理に極めて有効で不可欠な手段です.他方,除草剤に対して抵抗性をもつ雑草の出現が世界中で報告されています.この除草剤抵抗性雑草の出現は,除草剤が処理された個体があらたに抵抗性を獲得したことに因るものではなく,当該除草剤に対して遺伝的にもともと抵抗性を有していた個体が除草剤散布後も生残,繁殖し,その除草剤が連用されることによって抵抗性個体の頻度が高くなり顕在化した結果です.グリホサートは1974年に商品化されました.また,1996年にアメリカでグリホサート耐性遺伝子組換えダイズの栽培が始まりました.1996年にはオーストラリアでグリホサート抵抗性ボウムギが初めて報告され,日本でも2013年にネズミムギで報告されました.現在31か国の62草種で抵抗性の出現が報告されています.雑草の除草剤抵抗性は,その機構によって作用点抵抗性と非作用点抵抗性に大別されます.グリホサートの作用点抵抗性は,その標的酵素のEPSPSにおけるアミノ酸置換や遺伝子増幅によって生じます.非作用点抵抗性は,グリホサートの移行抑制・阻害などによるもので,ABCトランスポーターが関与する例も報告されています.雑草の除草剤抵抗性の進化を避けるためには,特定の除草剤に過度に依存せず,作用機作が異なる除草剤の使い分けを図り,除草剤と他の除草方法をうまく組み合わせることが必要です.
  • 井原 希
    2025 年17 巻 p. 13-23
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/30
    ジャーナル オープンアクセス
    南米原産のヒユ科多年生草本であるナガエツルノゲイトウは,世界30ヶ国以上に侵入し,各地で生態系被害や農業被害などをもたらす侵略的な外来雑草である.日本では,1989年に兵庫県で初めて確認され,現在まで東北以南で侵入が確認されている.原産地以外の侵入地域では主に節を有する茎や根の断片(以下,断片とする)から栄養繁殖する.茎が中空で節から折れやすいため,節を有する茎断片が水の流れに乗って移動し流域単位での分布拡大が懸念される.また,ナガエツルノゲイトウの環境適応力は高く,水域から陸域まで幅広い環境に生育する上,繁殖力,再生力が大きく定着すると根絶が非常に難しい.ナガエツルノゲイトウの管理は,未侵入地域や侵入初期の地域では早期発見・早期対策が重要である.発生地では不用意に断片を生じさせないよう,除草剤の利用などによる管理が望まれる.流域単位で分布を拡大させるナガエツルノゲイトウを効果的に管理するには,河川,水田,水路など本種の発生場所を一体的に管理する面的な総合防除が必要であり,今後,それを実現するための関係者間の情報共有,連携体制の構築が求められる.
  • 伊藤 操子
    2025 年17 巻 p. 24-33
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/30
    ジャーナル オープンアクセス
    世界各地に帰化している米国中・北部原産の多年生イネ科雑草メリケンカルカヤは,現在では東北地方にまで分布を広げ,都市・市街地域の空地,道路・鉄道・河川・公園などではもちろん,山間部の耕作放棄地などでも急激に目立つようになった.この高い侵略性を支えている最も顕著な特性は土壌適応幅が非常に広いことで,他種が生育できないやせ地・強酸性土壌(pH3)にも容易に侵入定着できる一方,肥沃地では旺盛に生育する.さらに,枯死した茎葉が長期間(刈らなければ約1年間も)束生のまま残存することも特徴的である.多年生でありながら根系やほふく茎のような貯蔵器官をもたない本種では,枯れ行く茎葉からの養分の還元が,翌春からの新生長の栄養源になっていることが推察される.また,繁殖は風散布体(長毛をつけた花序)によるが,それは風圧での移動に適した巧妙な形状となっている.以上のように,メリケンカルカヤの侵略性を支えている性質は,すでに全国を席巻している大型多年生種とは異なるところが多い.今後,生活圏の環境・社会変化の不確実性が高まるなか,どのような種と属性が侵略性・攻撃性を発揮するのか,柔軟に見守っていく必要を感じた.
  • 川本 あづみ
    2025 年17 巻 p. 34-41
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/30
    ジャーナル オープンアクセス
    本記事は昨年絶版となった「葛とクズ」(第10巻特集号)からの転載です.葛は万葉集にもよく詠われ,秋の七草として愛でられてきたように,古来里域に普通に生育し,根は葛粉や薬,つるは葛布,葉は食用や飼料として全身余すところなく利用されてきた非常に重要な植物でした.葛粉として代表的な吉野本葛の生産は17世紀初頭に始まったとされ,現在もその地で伝統産業として継続されています.葛粉の生産は冬場に集中する非常に大変な作業です.まず,堀子が葛粉採取に適した塊根を探し出して掘り取る,そして,それを粉砕し厳寒の中で何度も晒して精製するといった過程を経て,極上のでんぷんが得られるのですが,本稿ではその過程が詳細に紹介されています.伝統を継承していくには様々な課題がありますが,著者は葛粉の良さをより多くの人に知ってもらうために,子供たちへの出前授業を年間数多く行うとともに,「葛ソムリエ」の育成に努めています.
  • 小崎 隆志, 伊藤 幹二
    2025 年17 巻 p. 42-47
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/30
    ジャーナル オープンアクセス
    本記事は昨年絶版となった「葛とクズ」(第10巻特集号)からの転載です.現在雑草化しているクズは列島の繊維・衣料文化を担ってきた遺存作物であり,その伝統は掛川で継承されています.葛の繊維が衣服として利用され始めた歴史は古く,中国では周の時代(紀元前),日本では古墳時代とされていますが,鎌倉時代以降に武士や公家の着衣として汎用されてきました.材料は「這い蔓」(地面を這う当年生ほふく茎)のなかから厳選し手入れされたものです.また,蔓から繊維素材「葛(くず)芋(お)」としての完成品を得るまでには多くの作業過程が必要で,大変手間のかかる作業です.掛川葛布産業の衰退は葛芋の調達を韓国からの輸入に依存してきたことにあります.葛布はその独特の風合いから様々な製品に利用価値がありますが,葛布産業の活性化には葛芋の安定的なサプライチェーン確保が鍵となるでしょう.
feedback
Top