岩手医科大学歯学雑誌
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原著
髄床底部の穿孔の処置法に関する実験的研究
石田 達郎浜口 雅明斎藤 裕志村上 直美鈴木 哲男武田 泰典
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1985 年 10 巻 2 号 p. 85-93

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抄録

髄床底付近の穿孔に対する適切な処置法ならびに封鎖材料についてのより深い知見を得ることを目的として, 今回はまず, 成犬の上下顎臼歯を用い, 髄床底穿孔部を水硬性仮封材(Cavit®), 水酸化カルシウム(MPC®), ガッタパーチャ(Obturation Gutta®), アマルガム, 酸化亜鉛ユージノールセメント(ユージダイン®)の各材料で封鎖し, 27歯についてその治癒経過を病理組織学的に観察した。

1. いずれの実験群にも, 穿孔部付近の歯周組織には慢性の炎症性変化が生じており, また上皮の侵入増殖も多くみられた。

2. 水硬性仮封材(Cavit®)群では, 長期間経過例で炎症性病変が進展していた。

3. 水酸化カルシウム製剤(MPC®)群, ガッタパーチャ(Obturation Gutta®)群, 酸化亜鉛ユージノールセメント(ユージダイン®)群, 対照群では, 期間の経過と炎症性変化の程度に特に関連は認められなかった。

4. 炎症性変化の拡がりが最も小さかったのはアマルガム群で, 水酸化カルシウム製剤(MPC®)群, 酸化亜鉛ユージノールセメント(ユージダイン®)群, 対照群では概して炎症巣の拡がりは広範であった。

5.髄床底穿孔部を適切に封鎖することは難しく, 穿孔部処置後の良好な予後を期待することは困難であると考えられる。

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1985 岩手医科大学歯学会
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