岩手医科大学歯学雑誌
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最新号
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原著(研究)
  • 池田 裕之介, 小川 淳, 川井 忠, 高橋 徳明, 泉澤 充, 藤村 朗, 山田 浩之
    原稿種別: 研究論文
    2024 年 48 巻 3 号 p. 67-74
    発行日: 2024/02/28
    公開日: 2024/06/06
    ジャーナル フリー

    目的:本研究の目的は,埋伏下顎第三大臼歯(第三大臼歯)に関連して出現する下顎第二大臼歯(第 二大臼歯)の歯根吸収,第二大臼歯と第三大臼歯のう蝕の出現頻度,およびリスクファクターをX 線学的に検索することである.

    材料と方法:16 ~86 歳の224 症例にみられた第三大臼歯と第二大臼歯325 歯を対象とし,パノラマX 線画像では第三大臼歯の傾斜角度,埋伏状態,水平埋伏位置,歯科用コーンビームCT 画像ではう蝕と歯根吸収を評価した. 第二大臼歯の歯根吸収とう蝕の区別は,第二大臼歯が第三大臼歯に接している場合を歯根吸収,第三大臼歯に接していない場合をう蝕とした. 水平埋伏の深度は,浅在性のものからそれぞれA,B,C と分類した.

    結果:第二大臼歯の歯根吸収は40.9%,第二大臼歯のう蝕は13.5%,第三大臼歯のう蝕は7.6%に認められた. 年齢別にみた第二大臼歯の歯根吸収は,16 ~39 歳が最も多く,47.7%の頻度であった. 傾斜角度は60 ~74˚で歯根吸収は58.3%,第二大臼歯のう蝕は15.3%,第三大臼歯のう蝕が11.1%に認められた. 水平埋伏状態では第二大臼歯の歯根吸収が58.4%,第二大臼歯のう蝕が18.8%,第三大臼歯のう蝕が12.2%に認められ,なかでも歯根吸収が有意に多かった(p=<0.05). 水平埋伏の深度としては,深度A での歯根吸収が47.6%で最も多く認められた.

    結論:第三大臼歯が60 ~74˚と大きく傾斜し,第二大臼歯歯頸部に近接している場合には,第二大臼歯の歯根吸収が出現する頻度が高い. このような状態の第三大臼歯では,第二大臼歯の歯根吸収を回避するために,第三大臼歯の予防的抜去が推奨される.

症例報告
  • 橋口 大輔, 稲葉 陽, 松尾 小百合, 齊藤 桂子, 森川 和政
    原稿種別: 症例報告
    2024 年 48 巻 3 号 p. 75-79
    発行日: 2024/02/28
    公開日: 2024/06/06
    ジャーナル フリー

    乳幼児は身の回りのさまざまなものに興味を持ち,成人が予測できないものを口にすることがある.今回われわれは下顎乳中切歯に異物陥入を認めた症例を経験したので報告する.症例:患児は2 歳9 か月の女児.1 歳6 か月ころに転倒し近医を受診,歯冠形態の異常以外の症状がなかったため経過観察をしていたが,2歳5か月ころより下顎乳前歯の動揺および疼痛を訴えたため精査目的に当科紹介となった.口腔内所見では下顎左側乳中切歯の歯頚部に乳白色の構造物を認め,エックス線所見では周囲歯槽骨の吸収を認めたが,乳白色構造物と一致する不透過像を認めなかった.乳白色構造物は転倒事故により陥入した異物と判断し,摘出を行った.摘出した異物はストロー様であった.異物除去後も定期的に経過観察を続けたところ,処置後6 か月には歯槽骨の添加を認め,歯周状態の改善を認めた.その後も定期的に経過観察を行い,処置後1 年6 か月までは異常所見が無かったが,処置後1 年10 か月には内部吸収を認め,処置後2 年で脱落した.

    異物埋入事例は速やかに正確な診断をし,異物の除去を行う必要がある.また,除去後も歯周組織の回復傾向,患歯の症状確認を長期的に行うことが望ましい.加えて,保護者や保育関係者に対して乳幼児が異物を口腔内にいれてしまうことによって発生する事故に対する知識の普及をこれまで以上に広める必要がある.

特別寄稿
  • 秋山 直美
    原稿種別: その他
    2024 年 48 巻 3 号 p. 80-88
    発行日: 2024/02/28
    公開日: 2024/06/06
    ジャーナル フリー

    在宅医療では患者や家族等に医療管理をゆだねなければならない難しさがあり,在宅医療における患者安全の重要性はより強調されつつあるが,小さい事業所の多い現場では,職員の教育体制やキャリア形成等について課題が残る.いくつもの限界がある中で,在宅医療における医療安全,患者安全の実現をどのように保証し得るのか.地域連携,医科歯科連携等に代表されるように,在宅医療の提供場所は在宅だけに限局されず,活躍の場は広くなった.そして,在院日数が短縮されているため,重度の医療管理が必要な患者であっても病院から在宅へと,直接退院する例も増えた.このような状況下で在宅医療に特徴的なインシデントが起こっており,わずかではあるが患者の死亡事故につながるような事象が報告される. 本稿では,在宅医療における医療安全を論じるにあたって,うまくいかなかったことだけでなく,うまくいったケースにも着目して,在宅医療における安全を確保する方策について検討したい.

  • 鬼原 英道
    原稿種別: その他
    2024 年 48 巻 3 号 p. 89-94
    発行日: 2024/02/28
    公開日: 2024/06/06
    ジャーナル フリー

    目的:欠損補綴の選択肢の一つとして固定性インプラント支持補綴装置やインプラントオーバーデンチャーの症例数は確実に増加しており,インプラント治療を受けた高齢者の数も確実に増加すると考えられる.このような状況が現実であり,今後の高齢者のインプラント対応を考えていくことは必須と考えられる.今回の報告では,インプラント症例を提示し,インプラント治療を受けた高齢者への対応を考察する.

    対象:症例1;全顎的なインプラント治療を開業医にて行っており,包括的な治療が必要となったケース.症例2;すれ違い咬合により咀嚼機能の低下が認められ,80 歳以上の高齢者に固定性インプラント支持補綴装置を装着したケース.

    結論:全顎的なインプラント治療が行われていた症例では,訪問歯科治療で対応するのが最も困難と考えられる.このようなケースでは,患者が健康なときに,インプラントの上部構造を固定性補綴装置から可撤性補綴装置に移行するということが非常に重要である.また,高齢者にインプラント治療を行う場合は,可撤性補綴装置であれば訪問歯科治療での対応が容易になることから固定性補綴装置から可撤性補綴装置の交換時期をあらかじめ患者と決める必要があると考えられる.インプラント治療を行う際は,このような状況を前もって想定しインプラント治療を行うべきである.

第95回岩手医科大学歯学会例会抄録
特別講演
  • 田邉 憲昌
    原稿種別: 講演記事
    2024 年 48 巻 3 号 p. 95
    発行日: 2024/02/28
    公開日: 2024/06/06
    ジャーナル フリー

    近年の歯科臨床におけるデジタル技術の進歩はめざましく,ジルコニアによる歯冠補綴やコンポジットレジンブロックによるCAD/CAM 冠の保険収載など新しい治療法が普及してきている.中でもCAD/CAM 装置によるクラウンの製作は現在,最も臨床において広く普及しているデジタル技術の1 つであり,実際に岩手医科大学においても歯科医療センターでの製作数は年々増加し続けており,今後も発展していくことが期待される.

    現在の社会状況から,金属価格の上昇や歯科技工士の不足などの問題があり,CAD/CAM による補綴装置の製作はこれらの問題を解決する方法の1 つと考えられる.デジタル技術による補綴装置製作の利点としては,製作に関わる作業工程の短縮や人的・物的資源の削減といったメリットなどが挙げられる.しかしながら,デジタル技術が進歩しても,これまでに培われてきた鋳造法を中心とした補綴歯科治療よりも補綴装置の精度という意味では,まだまだ不十分な面が多く,今後の検討の余地が残されている.

    我々の研究グループでも口腔内スキャナーやデジタル咬合器などを用いたクラウン製作について,どうすれば臨床において有効な臨床成績が得られるのかを念頭に置いて製作の方法や手技についての検討を行ってきた.特にクラウン咬合面形態は,咀嚼・咬合機能に関わり,調整にも時間を要する部分であり,重要なポイントの一つである.

    本講演では下顎運動データを反映した咬合面形態を付与したCAD/CAM 冠の製作方法ならびに口腔内スキャナーによる咬合採得に咬合力がどのように影響するのかについて研究データをもとに報告する.

優秀論文賞受賞講演
一般演題
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