目的:本研究の目的は,埋伏下顎第三大臼歯(第三大臼歯)に関連して出現する下顎第二大臼歯(第 二大臼歯)の歯根吸収,第二大臼歯と第三大臼歯のう蝕の出現頻度,およびリスクファクターをX 線学的に検索することである.
材料と方法:16 ~86 歳の224 症例にみられた第三大臼歯と第二大臼歯325 歯を対象とし,パノラマX 線画像では第三大臼歯の傾斜角度,埋伏状態,水平埋伏位置,歯科用コーンビームCT 画像ではう蝕と歯根吸収を評価した. 第二大臼歯の歯根吸収とう蝕の区別は,第二大臼歯が第三大臼歯に接している場合を歯根吸収,第三大臼歯に接していない場合をう蝕とした. 水平埋伏の深度は,浅在性のものからそれぞれA,B,C と分類した.
結果:第二大臼歯の歯根吸収は40.9%,第二大臼歯のう蝕は13.5%,第三大臼歯のう蝕は7.6%に認められた. 年齢別にみた第二大臼歯の歯根吸収は,16 ~39 歳が最も多く,47.7%の頻度であった. 傾斜角度は60 ~74˚で歯根吸収は58.3%,第二大臼歯のう蝕は15.3%,第三大臼歯のう蝕が11.1%に認められた. 水平埋伏状態では第二大臼歯の歯根吸収が58.4%,第二大臼歯のう蝕が18.8%,第三大臼歯のう蝕が12.2%に認められ,なかでも歯根吸収が有意に多かった(p=<0.05). 水平埋伏の深度としては,深度A での歯根吸収が47.6%で最も多く認められた.
結論:第三大臼歯が60 ~74˚と大きく傾斜し,第二大臼歯歯頸部に近接している場合には,第二大臼歯の歯根吸収が出現する頻度が高い. このような状態の第三大臼歯では,第二大臼歯の歯根吸収を回避するために,第三大臼歯の予防的抜去が推奨される.
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