1977 年 2 巻 1 号 p. 29-35
オトガイ下部の比較的大きな腫大をきたしたものに摘出手術を行ない, 病理組織学的に結核性リンパ節炎と診断された1例を経験したので報告する。
症例は63歳男性で, 約10日前にオトガイ下部に軽度の圧痛を伴った腫脹に気付き, 消炎療法を受けたが腫脹は軽減せず当科へ紹介された。局所々見としては, オトガイ下ほぼ中央に鶏卵大のび漫性腫脹が認められ, いわゆる二重あごの様相を呈し, 比較的可動性のある境界明瞭な弾性硬の腫瘤を触知した。軟X線写真では, オトガイ下部に境界比較的明瞭な腫瘤が数珠状に認められた。臨床診断は口底腫瘍の疑いであった。治療は, 全麻下に口腔外より腫瘤の摘出術を行なった。腫瘤は4個存在し, 被膜で包まれ, 硬度は弾性硬であった。術後経過は良好であった。病理組織像は, リンパ節内に多数の結核結節がみられ, その中心部に乾酪巣, 類上皮細胞層, さらに外側にはLanghans巨細胞が存在し, 結核性リンパ節炎と診断された。