岩手医科大学歯学雑誌
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症例報告
歯学部外来における意識障害の救急対応
千葉 俊美
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2019 年 43 巻 3 号 p. 133-139

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抄録

症例は80 歳代女性.主訴は意識障害である.既往歴は 61 歳からラクナ梗塞の診断でバイアスピリンを内服しており,70 歳から慢性気管支炎で加療中である.本学歯科外来で義歯調整中に突然意識消失が出現し,直後にいびきと食物残渣の嘔吐を頻回認めた.歯科治療における薬剤の投与はなく,観血的治療も行っていなかった.意識障害のレベルは Japan Coma Scale で3桁であり,意識消失直後は最高血圧が 90mmHg 台まで低下し,経皮的動脈血酸素飽和度も 90% 前半まで低下したため,院内救急コールで救急外来に搬送となった.血液検査では血清 CRP 値の軽度上昇を認め,頭部CT 検査所見で両側大脳半球に低吸収域を認めたが,神経学的所見に明らかな異常を認めず,神経調節性失神の疑いの診断となった.本邦の歯科病院における救急症例数の発生頻度は 0.003-0.009% で,原因としては異常血圧上昇,異物誤嚥誤飲,血管迷走神経反射,過換気症候群の順である.救急症例発生時の迅速な対応は患者の予後を左右するため,常に患者の容体急変時の対処法の知識および技術の維持が求められる.

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2019 岩手医科大学歯学会
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