岩手医科大学歯学雑誌
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講演要旨集
~臨床実習と実習前教育のいまとこれから~
小林 琢也
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2024 年 48 巻 Supplement 号 p. 14-20

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抄録

わが国の歯学教育は現在大きな変革期を迎えている.20 世紀末までの日本のほとんどの大学は,教授を頂点とした縦割り組織の構図で各講座が個々の必要なパートを分担して独自の価値観で教育を行ってきた.この歯学教育の一番の問題は,講座ごと大学ごとに指導内容が統一されていないことである.これは,社会が大学に対して求める教育と大学が行う教育との間に乖離が生じることに繋がる.例えば,卒前の臨床参加型実習を形骸化し, 歯科医師としての態度と技能については歯科医師になってから教えればいい.すなわち歯科医師国家試験に合格してから訓練すればよいという考えをもつ大学の教育は,社会の要望とはかなり乖離した教育をしていることになる. 21 世紀を迎えて, この医学歯学の教育体系を変革しようという動きが出てきた.その大きな柱の一つが全国共通の教育目標を定めたモデル・コア・カリキュラムの策定である.また,その到達度の評価に全国的な水準を取り入れた共用試験の導入もその1 つである.前者は全国の歯学教育にある一定の必修教育内容を提示したものであり,後者はそのなかで臨床実習前の学習到達度を知識・技能・態度の3 部門で評価するものである.この共用試験は令和6 年から公的化され,知識の評価にはCBT Based Testing)を用い,技能・態度の評価にはOSCE(Objective StructuredClinical Examination)で評価される.また、国は歯科医師法の改正をし,歯学生が行う医療行為を法的に認めた.このことにより,診療参加型臨床実習を推進していく方針も大きな変革への表れの1 つと言えるだろう.本稿では,これらの歯学教育の制度の変化とこれからの流れについてお伝えしたい.

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2024 岩手医科大学歯学会
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