1981 年 6 巻 2 号 p. 90-97
人舌筋におけるLipofuscin(Lfc)の沈着態度を病理学的に検索した。
材料は剖検例の舌を用い, 舌尖, 舌体および舌根部を前額断として切り出した。標本はパラブィン切片とし, H・E., PAS, Masson-Fontana, Sudan Black B 染色などを行ったほか, 未染の標本を螢光顕微鏡にても検索した。Lfcの沈着度はDayanらの基準に従って3段階に分け, 個々の症例の総合的な沈着度は検索した3部位のうち2部位以上で示されたDayanらの基準をあて, それぞれGroup I, Group Ⅱ, Group Ⅲ とした。
検索した89例のうち72例(80.9%)の舌でLfcの沈着がみられた。 Lfc沈着度別の症例数は Group I が9例(12.5%), Group Ⅱが45例(62.5%), Group Ⅲが18例(25.0%)であり, 若い年代では Group I に属する症例が多く, 年齢を増すに従って Group Ⅱ がこれに代り, 高年者ではGroup Ⅲ に属する症例が多くなっていた。平均年齢はGroup l が33.7±9.4歳, Group Ⅱ が63.3±10.1歳, Group Ⅲ が73.1±9.8 歳であり, これらの群の平均年齢の間には有意の差がみられた(P<0.001).