原価計算を何も実施していない病院は3割弱である。しかし実施している原価計算の中心は診療科別であり,診療行為別・診療プロトコル別・DPC別・患者別というより高度な各種の原価計算は1割程度未満の実施に止まっている。ただしこれら高度な原価計算を含めて,DPC経験・病床規模(体制)・原価企画実務・事務職積極性がある病院では相対的に原価計算が盛んで,DPC環境への適応度が高いことが判った。DPC制度の本格化に伴い重要となる診療プロトコル別などの高度な原価計算が普及していくためには,DPC経験年数を積むことが重要であるがそれだけでは不十分である。こうした高度な原価計算を実施できるだけの人的及び情報システム的体制を確保しうる医療法人グループとしての規模の確保も必要である。また医療サービス原価企画への積極的取り組みの促進や,診療プロトコル開発への事務職の積極性を引き出す仕組みを構築することが重要である。