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会計プログレス
Online ISSN : 2435-9947
Print ISSN : 2189-6321
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2022 巻 (2022)
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租税負担削減行動と信用リスクの関係性
向 真央
2023 年 2023 巻 24 号 p. 1-20
発行日: 2023年
公開日: 2023/09/01
DOI
https://doi.org/10.34605/jaa.2023.24_1
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本稿では,企業の租税負担削減行動が信用リスクと信用リスクの不確実性に与える影響について調査する。分析の結果,以下の3 点が明らかにされた。第1 に,租税負担削減行動の相対的程度が高くなるほど,社債に付与される格付は低くなるという実証的証拠が提供された。格付機関のアナリストは,他の企業と比べて租税負担削減行動が行われた企業の信用リスクはより大きいと評価していることが示唆された。第2 に,租税負担削減行動の相対的程度が高くなるほど,格付スプリットはより大きくなることが明らかにされた。この結果は,他の企業と比べて租税負担削減行動が行われた企業ほど格付機関間における信用リスクの不確実性は高くなることを示している。第3 に,租税負担削減行動の相対的程度は格付や格付スプリットを介して間接的に負債コストに影響を与えている証拠が提示された。他の企業と比べて租税負担削減行動が行われた企業ほど,格付(格付スプリット)が低く(大きく)なることで間接的に負債コストは上昇することが示唆された。
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(984K)
IFRSの任意適用は会計情報の価値関連性に影響を与えるのか
苗 馨允, 金 鐘勲, 角ヶ谷 典幸
2023 年 2023 巻 24 号 p. 21-40
発行日: 2023年
公開日: 2023/09/01
DOI
https://doi.org/10.34605/jaa.2023.24_21
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海外企業を対象とした先行研究では,投資家が意思決定を行う際,国際財務報告基準(IFRS)とローカル基準の総額(純資産や純利益)の差異だけではなく,個々の会計基準の差異の影響にも関心が払われることが指摘されてきた。しかし,日本企業を対象にした先行研究では,データ入手の困難性ゆえに個々の会計基準の差異の影響が看過されてきた。そこで本研究では,純資産や純利益だけでなく,日本基準とIFRSの個々の会計基準の差異が,日本基準の会計数値に対して,追加的な価値関連性を有するか否かについても調査する。分析の結果,IFRSと日本基準ベースの純資産の調整額は,日本基準の会計数値に対して,追加的な価値関連性を有さないこと,IFRSと日本基準ベースの純利益の調整額は,日本基準の会計数値に対して,追加的な負の価値関連性を有すること,また4 つの会計基準(のれん,収益認識,税効果,および減損)は,追加的な正の価値関連性を有することが明らかにされた。
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(1136K)
土地重課税制度が譲渡益に与える影響
安間 陽加
2023 年 2023 巻 24 号 p. 41-58
発行日: 2023年
公開日: 2023/09/01
DOI
https://doi.org/10.34605/jaa.2023.24_41
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本稿の目的は,土地の譲渡益に対する重課税制度が,土地の価格に与える影響を実証的に明らかにすることである。昭和48年,投機目的の土地の売買による地価上昇抑制のため,土地の譲渡益に対して通常以上の課税を行うという重課措置が講じられた。本稿では,この重課税制度を軸として,土地の譲渡益に着目し,上場企業の土地保有戦略について検証する。この検証は,重課税措置による企業行動を観測するだけでなく,税制上の優遇措置の施行において議論される伏在税(implicit taxes)の存在を指摘するものであり,税制に起因した資産価格の上昇(下落)の実態を解明することも本稿の目的とする。分析の結果,重課税制度の施行アナウンス後の期間において,企業全体として譲渡益を低く計上していることが明らかとなった。この結果は,重課税制度の施行が,土地の駆け込み売却すなわち供給の増加を引き起こし,結果として地価が下落した可能性があること,すなわち重課税制度が土地という資産価格の低下を招いているという可能性を示唆している。
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(1015K)
伏在税の推計
住宅借入金等特別控除が住宅価格に与える影響
河瀬 豊
2023 年 2023 巻 24 号 p. 59-72
発行日: 2023年
公開日: 2023/09/01
DOI
https://doi.org/10.34605/jaa.2023.24_59
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課税優遇制度はその政策が優遇しようとしている対象に利得を与えているのだろうか。それとも実質的には他の経済主体がその恩恵を受けているのだろうか。この問題を明らかにすべく本稿では,住宅借入金等特別控除制度を例にして,この課税制度が住宅価格に与える影響を分析した。ここで利用した概念が伏在税(implicit taxes)である。伏在税は課税優遇された資産が買い上げられることにより発生し,優遇制度がないときに比べると,資産価格が伏在税の額だけ押し上げられる。この考え方に基づいて分析を行った結果,課税優遇制度が適用される物件価格は,適用されないものに比べて価格が高くなる結果が得られた。推計された伏在税額は,住宅購入者が受けられる特別控除の最高額の多くの部分を占めることから,この制度による恩恵は住宅購入者ではなく,住宅売却・販売者が得る可能性が高いことが示唆された。これは今後,住宅税制を議論するときに考慮すべき結果であるといえよう。
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(1019K)
米国公会計における期間衡平性
資本的資産にかかる会計処理を題材とした衡平観の考察
栗城 綾子
2023 年 2023 巻 24 号 p. 73-90
発行日: 2023年
公開日: 2023/09/01
DOI
https://doi.org/10.34605/jaa.2023.24_73
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本稿では,米国公会計における期間衡平性概念が依っている衡平観を明らかにするために,GASB会計基準の資本的資産にかかる会計処理を題材として検討した。検討の結果,米国公会計における期間衡平性概念が依っている衡平観が,応益負担に基づくものであることを明らかにしている。期間衡平性を評価するためには,資本的資産にかかる会計処理を設定するにあたり,当該資産によるサービス(便益)の提供を受ける世代と当該資産にかかるコストを負担する世代が一致するよう考慮されなければならない。応益負担に基づく衡平観に依れば,資本的資産には原価モデルを適用することが適当であり,再評価モデルは棄却される。そして,資本的資産の見積使用期間にわたり,当該資産によるサービス提供量を反映する方法で,当該資産の取得に要した支出額および除去コストを配分する必要がある。また,減価償却が適用されない適格インフラ資産については,取替法の欠陥により生じる問題を克服するために,当該資産によるサービス提供量を反映する方法で毎年の修繕引当金繰入額を決定することによって,資産維持計画にもとづき予想される支出額(追加および改良を除く。)を配分する必要がある。
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(983K)
需要の上振れリスクが企業のコスト構造に与える影響
企業ライフサイクルによる不確実性の分類
小笠原 亨, 新改 敬英, 原口 健太郎
2023 年 2023 巻 24 号 p. 91-108
発行日: 2023年
公開日: 2023/09/01
DOI
https://doi.org/10.34605/jaa.2023.24_91
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従来の定説と異なり,需要の不確実性が高まるほど,企業のコスト構造が固定費割合の高い硬直的なものになる傾向が先行研究で示されている。しかし,これらの研究では異なる不確実性に直面する企業を区別することなく分析しており,少数グループの存在が全体の推定結果に影響を与えた可能性を否定できない。本研究では,企業ライフサイクルによる分類をもちいて,不確実性の特徴とコスト構造の関係を検証した。結果,需要の上振れリスクが高い導入期および衰退期では,需要の不確実性が高まるほど,より硬直的なコスト構造が見られることが明らかとなった。この結果は,先行研究の分析結果が,異なる種類の不確実性をもつ少数派から影響を受けた可能性を示唆する。
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(1014K)
自然災害が企業の会計行動に与える影響
関東大震災と機械産業を中心にして
角 裕太
2023 年 2023 巻 24 号 p. 109-124
発行日: 2023年
公開日: 2023/09/01
DOI
https://doi.org/10.34605/jaa.2023.24_109
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本論文は,戦前日本で発生した関東大震災が企業の会計行動に与えた影響を明らかにすることを目的とする。戦前日本において生じた関東大震災と会計との関係を取り扱った研究は,個別企業に限定されており,その全体的な実態については明確にされてこなかった。そこで,本論文では,ジャパン・デジタル・アーカイブス・センターに所蔵されている1921年から1928年の間に発行された企業(機械産業)の営業報告書272期分をもとに,企業が営業報告書上で減価償却に関わる項目を開示していたか否かおよび償却率について,震災前後で変化が生じていたかどうかを検証した。結果,減価償却に関わる項目の開示については,震災後,その開示水準が低下していたことがわかった。これは,震災という外生的なショックが複数企業における減価償却という会計行動に一定の影響を与えていたことを示唆している。
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