会計プログレス
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  • 安間 陽加
    2025 年2025 巻26 号 p. 1-18
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/01
    ジャーナル フリー
     本稿の目的は,わが国における法人税率の変更が,企業の伏在税負担に影響を与えたのかどうか実証的に明らかにすることである。法人税率の変更は,所得移転を行うモチベーションとして機能することが先行研究で明らかにされている一方で,所得移転による顕在的な税負担の削減と,税引前投資収益率すなわち企業レベルの伏在税負担については,検討されてきていない。そこで,本稿は,法人税率の水準を課税優遇レベルと捉え,段階的な引き下げが行われた法人税率が企業レベルの伏在税負担に影響を与えたのか検証した。分析の結果,企業の顕在的な税負担が減少すなわち法人税率の水準が低下すると,税引前利益が減少することが明らかとなった。また,法人税率が変更された場合には,一般の伏在税が生じる理論的メカニズムとは反対に,企業レベルの税引前利益が増加することが明らかとなった。これは,税率引き下げに起因した所得移転による投資の減少によるものと解釈することができる。伏在税は,企業価値や生産性の向上を達成するためには,納税者である企業だけでなく政策立案者にとっても重要な検討課題である。本稿は,わが国において検討されてこなかった企業レベルの伏在税について,税率変更という側面から検証した点において,税務会計研究および政策立案に資するものである。
  • 加藤 大智, 安間 陽加
    2025 年2025 巻26 号 p. 19-34
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/01
    ジャーナル フリー
     本研究は,日本における法人税率の引き下げがコストの下方硬直性に与える影響を実証的に明らかにする。日本における法人税率は,近年段階的な引き下げが実施されてきた。法人税率の変更は,企業の法人税負担へ直接影響を及ぼし,低税率が適用される期間に所得を移転させるインセンティブを与える。このため,法人税率の引き下げ前の高税率が適用される期間において,コストの下方硬直性がより強くなると予想される。2008年から2023年の日本企業を対象にした分析の結果,法人税率の引き下げが,販売費及び一般管理費の下方硬直性に影響を与えることが明らかになった。加えて,法人税率の引き下げの影響は,税負担の高い企業で見られることが明らかになった。
  • 邱 勤斌
    2025 年2025 巻26 号 p. 35-56
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/01
    ジャーナル フリー
     本稿は,のれんの減損に関連する監査上の主要な検討事項(Key Audit Matters:KAM)の選定(以下,GWIKAM選定)が,のれんの減損損失の認識における経営者の裁量的行動(以下,のれんの減損に関する裁量的行動)に与える影響を実証的に分析した。その結果,監査人によってGWIKAM選定された場合,①利益平準化,②経営者交代,③高い業績連動報酬を動機とする,のれんの減損に関する裁量的行動が抑制されることが明らかとなった。この抑制効果は,連続してGWIKAM選定された場合にも観測される一方で,GWIKAM選定が解除されると消失することも確認された。本稿の発見は,のれんの減損損失の適正な認識を促進するための監査上の取り組みに重要な示唆を提供し,KAMの選定効果について参考となる実証的証拠を示すものである。
  • 清水 俊希
    2025 年2025 巻26 号 p. 57-76
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/01
    ジャーナル フリー
     本稿は,日本企業を題材に,財務報告の質が労働投資の効率性に与える影響を検証している。検証の結果,財務報告の質と労働投資の効率性の間には正の関係性があることが明らかとなった。また,サブサンプル分析では,高品質の財務報告が過小雇用(過小採用および過大解雇)ならびに過大雇用(過大採用および過小解雇)を抑制し,労働投資の効率性を向上させることが示された。くわえて,労働投資の効率性と財務報告の質に関する複数の代替的指標を用いた分析においても,主分析と同様の結果が確認された。これらの発見事項は,高品質の財務報告が労働投資の効率性の向上に関連することを示唆している。
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