本稿の目的は,製品原価計算研究の3つの潮流に基づいて,近年の製品原価計算研究の動向(TDABCとLabro等の所説)を検討した上で,ABCの実行可能性を高め,今後の研究に有用な示唆を提供するために,潮流間の相互作用や新たに得られるインプリケーションを明らかにすることである。その際,Noreen(1991)他によるanalytical approachを中心に据えて議論を展開している。
検討の結果,TDABCは,従来のABCの欠点である実施困難性に対処するために計算構造を簡略化し,実施段階における諸問題とコスト・ベネフィットの問題に対応することを企図していると評価できる。Labro等の所説は製品原価数値に焦点を当てた研究を展開しており,実施段階における諸問題に対処するための示唆を得ることができる。その一方でanalytical approach内における計算構造自体に焦点を当てた研究と製品原価数値に焦点を当てた研究との相互作用が希薄になる傾向が見受けられた。