会計プログレス
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税率変更が企業の伏在税負担に与える影響
安間 陽加
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2025 年 2025 巻 26 号 p. 1-18

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抄録
 本稿の目的は,わが国における法人税率の変更が,企業の伏在税負担に影響を与えたのかどうか実証的に明らかにすることである。法人税率の変更は,所得移転を行うモチベーションとして機能することが先行研究で明らかにされている一方で,所得移転による顕在的な税負担の削減と,税引前投資収益率すなわち企業レベルの伏在税負担については,検討されてきていない。そこで,本稿は,法人税率の水準を課税優遇レベルと捉え,段階的な引き下げが行われた法人税率が企業レベルの伏在税負担に影響を与えたのか検証した。分析の結果,企業の顕在的な税負担が減少すなわち法人税率の水準が低下すると,税引前利益が減少することが明らかとなった。また,法人税率が変更された場合には,一般の伏在税が生じる理論的メカニズムとは反対に,企業レベルの税引前利益が増加することが明らかとなった。これは,税率引き下げに起因した所得移転による投資の減少によるものと解釈することができる。伏在税は,企業価値や生産性の向上を達成するためには,納税者である企業だけでなく政策立案者にとっても重要な検討課題である。本稿は,わが国において検討されてこなかった企業レベルの伏在税について,税率変更という側面から検証した点において,税務会計研究および政策立案に資するものである。
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© 2025 日本会計研究学会
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