抄録
本稿は,会計の目的を再考し,特に意思決定説の展開を整理したうえで,今後の企業会計制度に対する影響を展望するものである。意思決定説はASOBAT を契機に企業会計制度に浸透し,取得原価主義から,公正価値を含む多様な測定基礎を認める方向性を確立した。一方で,有用性概念の抽象性や受託責任・保守主義との関係,さらには非財務情報の開示拡大に伴う会計の範囲それ自体の不明確さといった課題が指摘されてきた。日本基準も意思決定説を前提とした規定を導入したものの,理論的支柱となるべき概念フレームワークが討議資料にとどまり,質的特性に関する議論も不十分である。そこで今後,意思決定説を機能させるためには,会計の目的ならびに有用性に関する議論を深化させ,その成果を企業会計制度に反映していく作業が不可欠となる。