応用経済学研究
Online ISSN : 2758-9161
Print ISSN : 1882-9562
DSGE モデルによる租税帰着の分析
林田 実難波 了一安岡 匡也大野 裕之
著者情報
ジャーナル フリー

2019 年 12 巻 p. 57-78

詳細
抄録

本稿は,標準的なDSGE モデルに消費税及び所得格差を導入したモデルを用いて,消費増税による租税負担の帰着について考察した.分析の結果は次の通りである.消費増税によって,物価の上昇,産出量の減少がもたらされた.これらの結果は直感的である.一方,賃金率は上昇,実質利子率は低下した.所得格差に目を転じると,消費増税により,短期では,ロースキル労働者とハイスキル労働者の賃金格差は縮小するが,中期的には賃金格差は拡大することが明らかとなった.また,短・中期的には,労働所得への分配は上昇するが,資本所得への分配は低下することを明らかにした.これらの結果は,消費増税がこのようなマクロ経済諸変数を通じて,どの経済主体に負担をどの程度もたらすかを示しており,今後の政策において,逆進性,所得格差の観点から,非常に参考にすべきものであると言える.

著者関連情報
© 2019 日本応用経済学会
前の記事 次の記事
feedback
Top