2019 年 39 巻 3 号 p. 355-358
多発性骨髄腫では免疫抑制を来すが, 蜂窩織炎を合併した例の報告は少なく, 中でも蜂窩織炎を契機に多発性骨髄腫が判明した例は極めて稀である。難治性蜂窩織炎の経過中に, 免疫能低下の背景を検索する中で発見された多発性骨髄腫の一例を報告する。症例は56歳男性で, 左足背の疼痛, 腫脹を主訴に救急外来を受診した。左足背に皮下膿瘍を認め, 膿培養2セットからメチシリン感受性黄色ブドウ球菌 (以下, MSSA) が検出された。一方で, 総蛋白に対するアルブミン低値, 赤血球の連銭形成, IgG 高値, 免疫電気泳動でのM蛋白検出から多発性骨髄腫を疑い, 骨髄検査の結果, 同症の診断に至った。抗菌薬投与・創部処置への反応が乏しく約2カ月を要したものの, 蜂窩織炎は改善し, 多発性骨髄腫に対する化学療法を開始することができた。本症例のように非典型的な皮膚病変では, 免疫抑制や悪性腫瘍が背景となっている場合があるため, 積極的に検索することが肝要である。