抄録
近年、インフォームド・コンセントという用語が世間でよく聞かれるようになった。もしインフォームド・コンセントが真に実践されるならば、治療効果が高まり、医療事故が減少し、医師・患者間の信頼関係が向上すると期待される。2000年に下された一つの最高裁判決は、インフォームド・コンセントを医療現場で実践してゆくのに大きな推進力になると思われる。そこで、この最高裁判決の要旨、意義と射程範囲を検討しつつ、インフォームド・コンセントにおいて医師に求められている法的義務とはどのようなものなのかを解説する。本件事案の患者がエホバの証人であったことから、輸血拒否とインフォームド・コンセントをめぐる法的問題を中心に分析する。