本研究の目的は、ACP支援において、経営学の意思決定理論であるエフェクチュエーション(EFF)の適用可能性を検討することである。
ACPは、本人が将来の変化に備えて、自身の価値観や意向を家族や医療・ケア従事者と話し合うプロセスであり、医療・ケア従事者は予測合理性に基づいた専門的知識を用いて本人が将来への心づもりを考えること ができるように支援する。しかし予測合理性には限界があり、ACP支援に困難を来す場合も多い。
EFFとは、不確実な状況で熟達した起業家が使う思考様式で、将来予測の代わりに意思決定における5つの原則を用いて、すでにある手段や許容可能な損失を考えるところから始め、行動のハードルを下げるところに特徴がある。
検討の結果、ACPでもEFFが有効となる問題空間を有していること、ACP支援事例ではEFFと類似した考え方を活用していることがわかった。これらにより、EFFがACP支援に適用可能であり、EFFにより、ACPにおける新たな支援方法の創出、EFFと将来予測の併用による相乗効果、本人や家族の価値観の可視化などの効果が期待でき、EFFがACP支援に新たなアプローチ方法を提示できる可能性が示唆された。
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